不動産投資の成功には、入居率がカギとなることをご存知でしょうか? インターネットには不動産投資に関する数多くの情報があふれていますが、不動産投資と入居率の関係についてきちんと説明されているWebサイトは、かなり少ないといえます。

そこで今回は、不動産投資における入居率の重要性と入居率を決める要因、そして入居率を上げるための具体的な方法について、わかりやすく解説していきます。

不動産投資で利益を得る、2つの方法

入居率に触れる前に、不動産投資で利益を出す方法について、簡単に説明します。

不動産投資で利益を得る方法は、不動産を安く買って高く売るキャピタルゲイン(売却益)を狙う方法と、不動産オーナーとして不動産を入居者に賃貸して家賃という定期的な収入を得るインカムゲイン(運用利益)を求める方法の2つがあります。

キャピタルゲインを得るためには、不動産市場の動向を見極めるための専門的な不動産知識と経験が必要になります。サラリーマンなど、会社勤めをしながら副業として不動産投資を行う場合は、インカムゲインを得る目的で不動産オーナーとして賃貸物件を運用していく方法が一般的です。

不動産投資の成否のカギは、“入居率”にある

不動産投資における「入居率」とは何か?

不動産投資における「入居率」とは、所有する不動産の戸数に対する入居者の割合を意味します。具体的には、自分の所有する2戸のマンションのうち、1戸に入居者がいてもう1戸が空室なら、入居率は50%です。アパートの場合は、例えば自分の所有する1棟4室のアパートのうち、3室が入居済みで1室が空室なら入居率は75%となります。

入居率と同様によく扱われる指標として「空室率」があり、入居率が75%なら空室率は25%といったように入居率と空室率は常に相反する関係にあります。

入居率は、不動産投資の成否の状況をそのまま反映する指標として扱うことができることを覚えておきましょう。

不動産投資の成否のカギが「入居率」である理由

不動産投資の成否のカギは、入居率にあるといわれています。なぜなら、当たり前の話ですが、賃貸物件に入居者が入らないと月々の家賃が得られず、投資した物件の不動産ローンの返済で赤字になってしまうからです。

不動産運用を相続税対策などではなく、投資として行う以上、必ず利益を出さなければなりません。部屋が空いていることによるリスクは「空室リスク」ともいわれ、空室が出てしまうと、家賃収入を得ることができなくなるので、利益率が低下してしまいます。

首都圏における賃貸市場の動向

それでは、一般的な賃貸物件の入居率はどのくらいなのでしょうか?

トヨタグループの一社であり、日本銀行の「金融システムレポート」に引用されるほど信頼性の高い、日本の不動産に関する情報提供を行っている株式会社タスの『2018年11月期 首都圏賃貸住宅指標』(首都圏の空室状況を示した指標)によれば、2016年から2018年までの首都圏の空室傾向の変化を示す「空室率TVI(タス空室インデックス)」は、次のような数値になっています。

首都圏 空室率TVI(タス空室インデックス)(過去2年推移)

全体的な傾向として、空室ポイントは増加傾向にあります。ただし、空室率TVIの値はパーセントではなくポイントである点、また、戸数ベースとし、「満室稼働データ」と「経営難等物件データ」を省いた「空室募集データ」のみを対象範囲とした算出しているため、あくまで募集をしている賃貸物件の空室傾向を示すものである点に注意してください。

特にアパートに関しては、タスの「1都3県アパート系(木造、軽量鉄骨)空室率TVI」調査によれば、いずれも2015年5月頃の30ポイント前後から2018年11月は平均35ポイント以上、神奈川県は40ポイントを超えるなどポイントの増加が目立ちます。マンション系は、アパート系に比べると、それほどの変化は見られません。

1都3県アパート系(木造、軽量鉄骨)空室率TVI

1都3県マンション系(S造、RC造、SRC造)空室率TVI

都内の不動産市場の大きな動向としては、各大学が首都圏郊外から都心部へキャンパスを移転している動きが挙げられます。これが要因となり、東京都心部における賃貸住宅の需要は増加傾向です。

以上が不動産市場の傾向ですが、あくまで市場の動きです。「神奈川県でアパート経営をしたら空室になる」というものではありません。市場動向は参考としてチェックし、投資する不動産はアパートがよいのかマンションがよいのか、最終的には投資を検討している物件周辺環境はどうなっているのかといったミクロ環境要因も勘案し、投資判断をしましょう。

なぜ、入居率が低い物件が存在するのか?

エリアにはよりますが、入居率が低い物件が存在する主な背景として、土地所有者が利用されていない土地を有効活用や相続税対策の目的で新規の住宅供給が需要を上回るペースで行われている現状が挙げられます。

アパートを建てると、よく「相続税対策になる」といわれますが、相続税対策を目的とした新規物件が需要以上に増加することで、結果的に入居率が低い物件が増えてしまうことになります。

そもそも、なぜ、不動産を建てると節税対策になるのでしょうか?

例えば、現金で1億円を持っているAさんがいるとします。Aさんが死亡した場合、現金1億円なら相続税評価額は1億円になります。しかし、Aさんが生前にその1億円で5000万円の土地を買って5000万円のアパート(建物)を建てたとします。この場合、土地は相続税路線価によって評価され、8割ほどの評価額、つまり約4000万円となります。

●土地の評価額=5000万円×0.8=約4000万円

人に貸し出すと、アパートに住んでいる人が持つ借地権と借家権という権利がある分、所有者の権利が制限されるため、評価額は下がります。人に貸したアパートは貸家建付地と呼ばれます。貸家建付地の評価額は借地権割合と借家権割合、どのくらい貸しているかの割合である賃貸割合の割合を差し引いて、評価額を計算します。貸家建付地の評価額を算出する計算式は、以下の通りです。

●貸家建付地の評価額=土地の評価額×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

借地権の割合は、土地によって異なり一般的には60〜70%程度です。借地権の割合は、国税庁のHPに掲載されている財産評価基準(路線価図・評価倍率表)で確認できます。借家権は一律で30%と決まっています。賃貸割合は、アパートのすべての部屋の床面積に対する、実際に住んでいる人の占有面積に応じて決められ、満室の場合は100%となります。

例えば上記の4000万円の土地の場合、借地権割合が70%、賃貸割合が30%、賃貸割合が100%だったと仮定したときの計算式は以下の通りになります。

●貸家建付地の評価額=土地の評価額×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合)=4000万円×(1−70%×30%×100%)=3160万

土地の評価額は、3160万円となります。

建物に関しては、固定資産税評価額(時価の70%程度)で評価されるので、上記の5000万円で購入した建物の場合は、3500万円となり、さらに人に貸し出すことで借家権割合の30%が差し引かれて賃貸割合は100%であるため、2450万円となります。

●賃貸物件建物の評価額=固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)=3500万円×(1-30%×100%)=2450万円

この2450万円を、先ほどの土地と建物の評価額と合計すると、5610万円となります。

●3160万円+2450万円=5160万円

ご覧の通り、1億円の評価額と比べておよそ半分の評価額になってしまうのです。そのため、Aさんのように多くの人が相続税対策としてアパートを建てているのも、無理のない話かもしれません。

もちろん、アパートが全て相続税対策のためであるとは限りませんが、増加しているアパート経営者の主な目的が節税である以上、オーナーからすると入居者がついていようがいまいが大きな問題ではないので、入居率が低くなることは自然な現象といえます。

入居率が低い原因は、新しい入居者が入ってこないから

その他の、物件の入居率が下がってしまう原因は何でしょうか? その一つに、現在の入居者が転居することが挙げられます。

入居者が転居する理由は就職や転勤や結婚などさまざまです。つまり、住み心地がどんなに良くても引っ越しの件数をゼロにすることはできません。もちろん、住環境を整えて住み心地が原因による退去を防ぐことは重要です。しかし、住み心地の良し悪しのみが入居率を左右するわけではありません。

入居率が低くなってしまう原因は、新しい入居者が入って来ない点にあります。新しい入居者が入らない原因は、主に以下の3点です。

①家賃が高い

物件がある地域の家賃相場に比べて家賃が高い場合、入居率は下がります。同等の物件設備や築年数の物件がある場合、特別な事情がない限り、入居者が高い家賃の部屋より相場の家賃の部屋を選ぶのは当然といえるでしょう。

②募集状況が悪い

入居者募集の情報がインターネットに掲載されていなければ、どんなに条件の良い物件でも物件を探している人の目にとまりにくいため、入居率は上がりません。また、不動産業者との関係性が不十分な場合も、優先的に物件を紹介してくれないなど入居率の低下につながる可能性があります。

③部屋・建物の印象が悪い

部屋の中がきちんとクリーニングされていなかったり、敷地や階段にゴミが散らかっていたりすると、内覧に来た場合に悪印象を与えます。内覧の印象が悪ければ、多少家賃が相場より安かったとしても、住もうと思う人は減ってしまうでしょう。

入居率の高い物件の特徴

では、逆に入居率が高い物件には、どのような特徴があるのでしょうか?

入居率が高い物件の一般的な条件として、地域などの立地条件、建物や設備の条件が挙げられます。

まず、東京をはじめとする首都圏、大阪市や京都市、名古屋市、福岡市など政令指定都市であれば、都市の人口が多いため、入居率は高まります。立地条件としては、駅から徒歩10分以内、保育園や小学校があるといったことが挙げられるでしょう。

建物設備としては、追い炊き、浴室乾燥機、24時間ゴミ捨て可能なゴミ置き場、オートロック機能などの設備が充実していて、家賃が相場並みかやや安いといった条件であれば、入居率が高まります。

入居率を上げる方法

しかし、物件が必ずしも前述のような特徴を備えているとは限りません。そのような場合、入居率はどのようにすれば上がるのでしょうか?

よくある方法として挙げられるのは、リフォームです。しかし、例えば畳の部屋をフローリングにリフォームすることが入居率アップにつながるかといえば、そうとは限りません。「畳の方が落ち着く」という入居者も存在するためです。

確実に入居率を上げるためには、下記の3つの方法が有効です。

①入居者目線で物件の強みをアピールする

物件の入居率を上げるためのキーワードは、「入居者目線」です。

入居者の目線をもって物件と物件の周辺環境を見直すと、さまざまなアピールポイントが見えてきます。近くに生活必需品が販売されているスーパーがあれば、立派なアピールポイントになるでしょう。また、現代生活ではテレビやパソコン、スマートフォンの充電など多くの家電製品を使用するので、たくさんのコンセントがあればウリの一つになります。

また、短所だと思っていたポイントを逆の角度から見ることで長所ととらえることもできます。具体的には、繁華街から離れていて活気がないなら治安が良い、都心から離れているならば騒音が少なく周りに自然が多い……といった解釈です。

上記のように、物件を探している人が気づきにくいアピールポイントを、募集をする際に広告するとよいでしょう。

②不動産業者との関係性を良好に保つ

入居率と不動産業者は密接な関係があります。なぜなら、実際に入居先を探している人に物件を紹介して内覧の案内をして契約を成立させるという一連の紹介活動を行うのは、不動産業者だからです。

不動産業者との関係を良好に保つために、特別なことをする必要はありません。連絡を密に取る、小さなことで怒ったりしないなど、基本的なマナーを守ることが大切です。また、不動産業者から良い意味で“ひいき”にされるためには、数千円台の値引きは不動産業者の裁量に任せるなどの方法を取ると、不動産業者のやる気を引き出すことができます。もちろん、この場合はしっかりと利益が確保できる範囲での値引きが前提です。

不動産投資を成功させるための大切なパートナーとして、不動産業者と付き合いましょう。

③「清潔感」を追求する

お金をかけず、確実に効果が見込まれるのが、部屋をきれいに清掃することです。①の利用者目線にも関連しますが、ゴミが散らかっていたり、トイレが汚れていたりする部屋に住みたいと思うでしょうか? ほとんどの人は住みたいとは思わないはずです。

きちんと清掃や報告をしてくれる物件管理会社に依頼して、共有部・専有部ともに清潔な状態にして内覧する人を迎えることが、確実な入居率アップの方法といえます(自信で管理をし、高い入居率を実現している大家さんは、小まめに清掃をしています)。

また、明るい照明を設置して明るい雰囲気を演出する、ワックスをかけてフローリングをピカピカに磨き上げるといった、通常の清掃以外の方法で内覧の印象を良くすることも重要なポイントとなります。

空室を減らして入居率を上げることが、不動産投資を成功に導くカギ

不動産投資と入居率の関係についておさらいしましょう。

  • 不動産投資で安定して利益を得るためには、入居率の向上が最重要課題。
  • 近年の不動産市場における入居率の低下の主な原因は、需要を考えない土地の有効活用や相続税対策を目的としたアパートなどの住宅の過剰供給にある。
  • 通常の不動産経営において入居率が低い主な原因は、需要がないエリアでのアパートやマンションの建設、相場より家賃が高い、募集がうまくいっていない、清掃状況に問題がある。
  • 入居率を上げるためのポイントは、入居者目線で考える、不動産業者との関係を良好に保つ、清潔感を追求するの3つ。

不動産投資は株式投資などと同じ投資である以上、リスクが存在します。中でも大きなリスクは、空室リスクです。従って、空室を減らして入居率を上げることが、不動産投資を成功させるカギだといえます。