これから不動産投資をはじめようという人が、まず考えなければならないのは、資金計画です。

不動産はすぐには換金しにくいため、安心して運用していくためには、あらかじめさまざまなリスクを想定した資金計画を立てておかなければなりません。とりわけ、借り入れをする場合には、現金一括で購入する場合と比べて金利変動などのリスクが増える、ということを理解しておくべきです。

今回解説する「資金計画を立てるときに気をつけておくべきこと」と「具体的な資金計画の立て方」を参考に、しっかりと資金計画の準備をしてみてください。

生活費の把握

新築のマンションやアパートなどの賃貸用不動産を購入し、入居者の募集を開始しても、すぐに入居者が見つかるとは限りません。

そうした空室リスクを考えた場合、不動産投資をはじめる前にある程度の余裕を持った資金計画を立てることが大切だといえるでしょう。そのため、まずは自分や家族の生活費や教育費といった支出が毎月、あるいは毎年どれくらい発生しているのかをしっかり把握しておくことが大切です。とりわけ教育費は、子どもが希望する進路や、通う学校が公立か私立かなどによって大きく変動するものだということを、頭に入れておいてください。

サラリーマンのように投資以外からの収入がある方でも、病気やけがで働けなくなった場合、生活費が賄えるほどの生命保険に加入しているか、それともそのような場合には預貯金でカバーできるのか。不動産投資におけるリスクとは一見関係ないように思われますが、主たる収入がなくなってしまう、というリスクが現実になってしまうと、投資に回すための資金がなくなってしまいます。自身の生活費に関してもしっかりと把握し、このようなリスクも想定して資金計画を考えましょう。

金融機関の選び方

サラリーマン、公務員など給与所得者の方が、不動産投資をはじめることを目的に投資物件を購入する場合、資金を全て預貯金から支払うケースはあまり多くなく、金融機関のアパートローンを利用するのが一般的です。

すでに不動産を所有している場合は、その不動産を担保としてアパートローンを組むことができるケースもあるため、手持ちの資金の数倍から数十倍の資金を投資に活用できることもあります。

金融機関には日本全国に支店を持つメガバンクから、地元密着型の地方銀行や信用金庫までさまざまな種類があります。

メガバンクを選ぶメリットは、地方銀行や信用金庫よりも比較的低金利のアパートローン商品があるほか、支店数が多いため相談が気軽にできる点です。地方銀行や信用金庫を選ぶメリットは、地域密着型なのでその地域で不動産投資を行なう際には地元ならではの情報を持っている、特徴的なアパートローン商品を扱っていることがある点です。

また、金融機関ごとにアパートローンの貸出金利が異なることがあるのはもちろんのこと、それ以外の条件面も含めて、融資の基準は同じ銀行であっても支店ごとに異なることもあり得ます。さらに、投資対象の不動産の売主となる不動産会社によっても、優遇金利が使用できるかできないかの取扱いに差異が生じ、結果的に金利が変わることもあります。

不動産投資は融資金額が大きいため、0.1%の金利差でも、利息の支払金額が大きく変わってきます。融資を使う際の資金計画において、融資を申し込む前にあらかじめ情報収集をしっかりした上で、どの金融機関のアパートローンで融資を受けるのか決めることがとても大切です。

用意しなければならない資金

不動産投資をはじめるときは、物件の取得費用だけではなく、不動産会社に対して支払う仲介手数料や、不動産取得税、固定資産税、取得した不動産の登記のための登録免許税などの税金や、司法書士報酬、抵当権設定費用などが必要となります。

これらの費用が合計でいくらになるかは物件価格や融資金額によって異なってくるので、不動産会社に見積もってもらいましょう。その際、注意するべきポイントは、どれだけの自己資金を準備しておくかということです。

不動産投資は、購入した不動産がそのまま担保として利用できることから、金融機関が高い評価をしてくれるような資産価値が高い不動産は、比較的融資を受けやすいというメリットがあります。しかし、資金の全額を融資だけに頼ることは、その分の利息負担を背負うことになるだけでなく、審査に通らないケースもあるので、注意しましょう。

貯蓄に余裕がある場合は、物件価格の5~10%程度の自己資金を頭金として準備しておくことが、金利上昇リスクに備えた資金計画につながります。

収支見通し

資金計画は、「いかにして物件購入のための資金を調達するか」ということだけ意識すればよいというものではありません。借り入れ後にきちんとローンを返済できるのか、自己資金を投入した場合には、その金額を将来的に回収できる見込みがあるかどうかの見通しを立てることも、重要なポイントです。

特に不動産投資は、物件を購入するときだけではなく、その後も物件修繕費や付帯設備の修理費など、突発的な費用が発生するものだということを忘れないようにしましょう。また、空室になり家賃収入が入ってこないケースも想定しておきましょう。

こうした購入後の資金収支は、多くの場合、物件を販売する不動産会社側が具体的なシミュレーションを作成してくれます。

不動産会社との話し合いの際には、シミュレーションの前提条件をしっかり確認し、試算において疑問点や不安な点があれば積極的に質問して、安心できる資金計画を作成するようにしましょう。

諸費用の項目

物件価格以外にかかってくる諸費用のうち、最初の段階で発生するのが、物件を購入した不動産会社に支払う仲介手数料です。400万円を超える取引金額であれば、取引価格の3%+6万円+消費税で計算することができます。ただし、購入する物件の売主である不動産会社から直接購入した場合は、仲介手数料は発生しません。

その他、不動産取得にかかる税金として印紙税や登録免許税、不動産取得税があります。

印紙税

印紙税は「500万円超1000万円以下であれば1万円」「1000万円超5000万円以下であれば2万円」「5000万円超1億円以下であれば6万円」です(特例により、2020年3月31日まではそれぞれ5000円・1万円・3万円に軽減されます)。

登録免許税

登録免許税について、土地は「固定資産税評価額の2%(特例により、2019年3月31日までは1.5%)」、建物は「固定資産税評価額の2%(特例により2020年3月31日までは1.5%)」です。

不動産取得税

不動産取得税は、土地・建物ともに固定資産税評価額の4%です(特例により、2021年3月31日までは3%)。

また、不動産登記を司法書士に依頼した場合の報酬、金融機関に支払うローン事務手数料、保証会社に支払う保証料などはその契約に基づいた金額を支払わなければなりません。物件を取得した場合には火災保険に加入する必要があり、通常は10年分を一括払いすることになります。保険料は補償内容や建物の材質、構造、築年数によって大きく異なりますので、契約書をしっかりチェックしてください。

資金計画を作成する際には想定外の諸費用が発生するリスクがないか、確認しておくとよいでしょう。

初年度以降にかかる費用

仲介手数料、登記費用、不動産取得税といった費用は物件取得の初年度だけかかる費用ですが、賃貸管理委託費、建物管理費や修繕積立金、固定資産税のように、毎月、毎年一定の頻度で発生する費用もあります。そのため、不動産投資をはじめるときには、それらの費用の初年度分と、できれば数年度先までの金額をあらかじめ用意しておいた方が安心して運用開始できるでしょう。

入居者募集、契約締結、家賃の収受、トラブル・クレーム対応といった賃貸管理に必要な賃貸管理委託費がいくらになるのかは、依頼する不動産会社や管理会社にもよりますが、相場としては家賃の5%程度と見てよいでしょう。

固定資産税は住んでいる地域や、所有している物件が新築物件か中古物件かなど、多少の変動要素があるものの、基本的には固定資産税評価額の1.4%です。さらに、都市計画法で定められた都市計画区域のうち、市街化区域内にある土地、家屋に対しては0.3%の都市計画税がかかります。

資金計画を作成する上で、このように初年度以降に費用がかかることも想定しましょう。

元利均等返済

資金の借り入れをする際に多く選ばれているのは、毎回「元本返済と利息支払いを合わせた額」を均等に返済する「元利均等返済」という方法です。この場合、毎回の金融機関への支払額は一定であっても、元本と利息の内訳はその度に異なるということを知っておくことが大切です。

そして元利均等返済の場合、借入金利によって異なりますが、初期の頃は内訳のほとんどが元本ではなく、利息の支払いとなるので、返済をしてもなかなか元本が減りません。従って、仮に購入から数年程度の短い期間で物件を売却しようとした場合、売却に伴う費用や物件価格の下落によっては元本が返済しきれなくなる可能性があるということです。

そうしたリスクへの対策として心がけなければならないことは、「金融機関から借り入れをしても物件を売れば、返済できる」と安易に考えるのではなく、あらかじめある程度の頭金を用意して、できる限り借入額を抑えることができるようにする準備です。

返済の仕組みに関しても、上記の「元利均等返済」の他に、「元金均等返済」の返済方法があり、その違いに関してのメリット・デメリットを確認しておくことが、重要になるでしょう。

理解しておくべき金利の違い

金融機関から融資を受けるときに契約する金利には、「変動金利」と「固定金利」があります。その違いをよく理解しておきましょう。

変動金利は、将来的に市場金利によって返済しなければならない金利が変わりうるというものです(市場金利が上昇すれば、返済金利も上昇し、市場金利が下落すれば、返済金利も下落します)。一方、固定金利は、市場金利がいくら変動したとしても契約した当初の金利が変わらないものです(固定金利の場合、市場金利が下落しても返済金利は下がってくれませんが、逆に市場金利が上昇しても、返済金利は変わらないで済むということです)。

変動金利を選択する場合は、現状の金利が続かないと返済できなくなってしまうような資金計画を立てるのではなく、ある程度の金利上昇があったとしてもしっかり返済を続けられるような資金計画を立てていきましょう。