不動産投資による節税とは、主に所得税や住民税を節税することを指します。この2つの税金は所得に対して課税されるものなので、当然、不動産投資によって得られる不動産所得にも課税されます。

今回は、不動産投資をどのように所得税や住民税の節税につなげていくのか、その方法についてご紹介します。

不動産所得に課税される税金の種類

不動産所得とは、土地・家屋の貸し付けによる所得(地代、家賃、権利金、礼金など)や、地上権・借地権の設定および貸し付けによる所得のことであり、事業所得や譲渡所得は除外されます。

なお、不動産所得に課税される税金として所得税、住民税、消費税、事業税などがありますが、今回取り上げるのは「所得税」と「住民税」です。

不動産所得の計算方法

不動産所得は、次の計算式によって算出します。

必要経費とは、不動産収入を得るためにかかる費用をいいます。主に、次のような項目が該当します。

所得税は原則「総合課税」

所得税や住民税には、原則として「すべての所得金額を合計して、総額に対する税額を計算する」という総合課税が適用されます。

会社員が不動産投資を行った場合、勤務先から受け取る「給与所得」と、不動産投資から得る「不動産所得」がそれぞれ発生します。しかし、所得税を計算する際は「給与所得」と「不動産所得」を合計し、総額に対する税金を計算することになります。

所得税と住民税の計算方法

所得税と住民税は、それぞれ次の算出式で計算をします。なお、所得税は、2013年1月1日から2037年12月31日までの間、復興特別所得税として2.1%の額が上乗せされます。

所得税

課税所得金額(注1)×税率(注2)-控除額(注3)

住民税

均等割額(注4)+所得割額(注5)

注1:課税所得金額は、所得金額(給与所得+不動産所得)から所得控除額(配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除等)を差し引いたものです。
注2:税率は所得税速算表の税率であり、最低5%から最高45%までの税率を乗じます(累進課税方式となっており、所得金額に応じて税率が高くなります)。
注3:控除額は、所得税速算表にある税率ごとに決まっています。
注4:住民税の均等割額は、原則として、市区町村民税3000円と都道府県民税1000円の合計、4000円となっています。なお、東日本大震災からの復興を図ることを目的として、2014年度から2023年度までの10年間は、都道府県民税と市区町村民税にそれぞれ500円(合計1000円)加算されます。
注5:所得割額については、所得税の確定申告書を税務署に提出すると、住所地の市区町村に連絡され、前年の所得が課税標準となります。税率は都道府県民税4%、市区町村民税6%の合計10%です。

不動産投資による所得税・住民税の節税スキーム

では、実際に不動産投資がどのようにして所得税と住民税の節税につながるのか、見ていきましょう。

損益通算による節税

不動産投資による不動産所得は、収支が赤字になってしまう場合もあります。特に不動産の購入初年度は、登記費用や不動産所得税、火災保険料など諸費用の発生により経費が収入を上回ってしまうことが多いのです。会社員など給与所得がある方の場合、毎月の給料からすでに所得税が差し引かれているため、不動産所得による赤字を給与所得から差し引くことができます。これを、損益通算といいます。

この損益通算によって課税対象の所得が少なくなることで、結果的に所得税や住民税を減らすことができるのです。

減価償却費による節税

減価償却とは、経年とともに建物の価値が下がっていくものと考え、毎年減った分の価値を、帳簿上に経費として計上することです。減価償却費とは、この減価償却によって発生する費用のことを指しています。ここで注意すべき点は、土地は対象外であり、建物部分しか減価償却できないということです。

また、経費として計上できる年数は、建物の構造により異なっており、それぞれに法律で定められている法定耐用年数が基準となります。

上記の耐用年数内の物件で不動産投資を行うと、帳簿上に減価償却費を経費として計上することが可能になります。ただし、減価償却費はあくまでも「帳簿上」のことなので、実際にお金を支出するわけではありません。つまり、帳簿上の赤字によって所得税や住民税を抑えることができるというわけです。

シミュレーション

築12年の木造建築の家屋(法定耐用年数22年)を500万円で購入した場合、残り10年で価値がゼロになります。この場合、毎年50万円ずつ減価するため、減価償却費50万円を経費として計上できます。

家賃収入が100万円、実際の支出が80万円、減価償却費が50万円とすると、帳簿上は経費が130万円となり、30万円の赤字が発生します。こうなったとき、前述の損益通算をして課税所得金額を下げることができるのです。

仮に、給与所得が420万円だったとすると、不動産所得のマイナス分の30万円を差し引くことで、課税対象となる課税所得金額を390万円に下げることができます。

課税所得金額が下がることにより、所得税・住民税を抑えることができるというわけです。

青色申告を利用すると、「青色申告特別控除」が受けられる

青色申告とは、確定申告の一つです。申告用紙が青いことから「青色申告」と呼ばれています。

青色申告を利用するためには、事前に青色申告申請書の届け出をする必要がありますが、すでに不動産投資をして家賃収入がある方でも、青色申告を利用できます。

青色申告のメリット「青色申告特別控除」

青色申告特別控除は、税金の計算をする際、あらかじめ所得金額から65万円または10万円を差し引くことができます。これにより課税対象になる所得金額が少なくなり、所得税や住民税が抑えられる仕組みです。

65万円の控除を受けるための条件

青色申告特別控除で65万円の控除を受けるためには、次の条件を満たしている必要があります。

適用を受けるためには、確定申告の期限を厳守しなければなりません。不動産所得の金額が青色申告特別控除の65万円に満たない場合は、不動産所得の金額が限度額となります。

青色申告は特別控除以外にもメリットがある

青色申告のメリットは、特別控除だけではありません。他に2つのメリットがあります。

純損失の繰り越しと純損益の繰り戻し

不動産投資で純損失が生じ、給与所得と合算(損益通算)しても赤字になる場合、損失した金額を翌年から3年間繰り越して翌年以後に発生した所得額(黒字の金額)と相殺することができます。また、前年も青色申告による確定申告をしている場合は、損失額を前年の所得額に繰り戻して控除することが可能となり、前年の所得税の還付が受けられます(前者を「純損失の繰り越し」、後者を「純損失の繰り戻し」といいます)。

青色事業専従者給与

青色事業専従者給与とは、配偶者など生計を共にしている親族への給与を経費として計上することができる仕組みです。給与を経費に計上することで、課税所得を減らすことができます。ただし、青色事業専従者と認められるためには、次の条件を満たしている必要があります。

ちなみに、他の事業に携わっている場合、その従事時間が長いと青色事業専従者としては認められないことがあります。ただし、一定の事由(死亡、長期にわたる病気、婚姻など)により、親族として不動産事業に従事することができなかった場合、従事することができると認められる期間の2分の1を超える期間に専ら従事していれば足りるとされています(所得税法施行令第165条)。

一定の所得金額を超えると法人の方が節税効果は高くなる

不動産投資は個人として行っても、所得税や住民税を抑えることは可能です。しかし、個人で得る所得(収入から経費を差し引いた額)が900万円を超えた場合には、個人に課税される所得税と住民税の税率より、法人税の税率の方が低くなります。そのため、不動産所得と給与所得の合計額が900万円を超えるようになったら、法人を設立し、法人で不動産を所有した方が、より節税効果が高くなります。

個人の所得に対して課せられる所得税には、累進課税という「所得が上がるにつれ、税率が高くなる仕組み」が適用されています。

一方、法人に課税される法人税率は、中小法人の場合、年800万円以下の税率は一律19%(2016年4月1日~2019年3月31日までに事業を開始している場合は、15%)、年800万円超えの税率は一律23.2%(2016年4月1日~2018年3月31日までに事業を開始している場合は、23.4%)です。

不動産所得がある程度大きくなってきている場合には、節税対策として法人化を検討してみるということも、一つの方法といえるでしょう。

所得税や住民税以外にも不動産投資で節税対策ができる税金は?

ここまで、不動産投資で所得税や住民税を抑える方法について解説してきましたが、不動産投資は所得税や住民税を抑える以外に、相続税対策としても有効です。

不動産投資による相続税対策

不動産投資でできる相続税対策には、相続税の課税対象となる「遺産総額」がポイントとなります。そして、この遺産総額を算出するには、財産の価値を計算する必要があります。

財産が現預金であればその金額がそのままの価値となりますが、不動産の場合、相続税評価額という方法で財産を評価します(おおむね、相続税評価額は実際の地価よりも低くなります)。

不動産を持っていると、現預金で資産を保有するよりも相続税の課税対象となる評価額が下げられ、実際の地価と相続税評価額のかい離が生まれるため、相続税の節税につながるのです。

「小規模宅地等の特例」を適用して納税額を控除

不動産は相続税の計算の基となる課税対象価額を抑えられますが、被相続人(亡くなった方)の所有している土地には、相続税の納税額を控除できる「小規模宅地等の特例」があります。

小規模宅地等の特例は、主に、被相続人の居住用の宅地に対する特例ですが、事業用の宅地に対しても適用されます(貸付事業用の宅地の場合には、200㎡まで最大50%減額)。

ただし、小規模宅地等の特例の適用を受ける場合には、相続税の申告期限までに貸付事業を引き継ぎ、申告期限までその宅地などを保有し継続して事業を行っている必要があります。また、必ず相続税の申告をしなければなりません。

不動産投資によって発生する税金

不動産投資は、所得税や住民税、場合によっては相続税を抑えることができます。しかし、不動産投資によって課税される税金があることも理解しておきましょう。

不動産投資によって課税される税金は、不動産を取得したときの「不動産取得税」のほか、保有することに対して課税される「固定資産税」と「都市計画税」があります。

不動産取得税は、土地・建物それぞれにかかり、課税標準額(固定資産税評価額)に税率4%をかけて計算されます(特例により2021年3月31日までは3%)。固定資産税は、課税標準に税率1.4%をかけて年1回課税されるものです。課税標準とは、固定資産課税台帳に登録されている固定資産税評価額のことで、原則として3年に1度評価替えされることになっています。都市計画税は、都市計画法による都市計画区域のうち、原則として市街化区域内に所在する土地と家屋が対象です。固定資産税評価額に対して基本的には0.3%を上限として課税され、固定資産税と併せて納付します。

節税対策は目的ではなく、活用するもの

 

不動産投資による節税対策には、「課税所得金額を下げることにより所得税や住民税を抑える方法」と「遺産総額を下げることにより相続税を抑える方法」があります。しかし、節税対策という側面だけで不動産投資をすると、思っていたようなメリットを得られない可能性があることも覚えておきましょう。

「節税対策のみを目的」とするのではなく、「節税対策を上手に活用しながら不動産投資をする」ことを、心掛けてください。