【第5回】2016年のマンション投資と日本経済の行方は?

Dr.(ドクター)野中の不動産投資トレンド予測

2020年の東京五輪に向けて東京中の再開発が加速し、街が大きく変貌を遂げています。
安倍首相は2020年までにGDP600兆円の目標を発表しました。今後日本の経済が大きく変わっていくことが予想されます。
今後マンション投資にどういった影響が出るのでしょうか。
まずは2015年の経済動向を振り返ってみましょう。

point1 2015年の経済動向を振り返って

2015年の株価は回復基調となりました。2015年6月24日には日経平均株価が2万942円まで上昇し、2000年4月12日のITバブル期の2万833円を超え1996年12月以来18年半ぶりの高値となりました。2015年の終値は19年ぶりに1万9,000円台となりました。

大卒内定率は2015年12月1日現在80.4%となり5年連続で上昇、リーマンショック前の2008年と同水準に回復してきています。

安倍内閣が発足して2015年12月には丸3年を迎えました。この間アベノミクスは功を奏して景気も回復が株価に反映されてきているようです。

円安も続いています。2015年3月には1ドル121円と7年ぶりの円安水準となりました。その後も為替は大きく変動しながら2016年2月1日には120円前後となっています。

point2 2016年の幕明けとインフレターゲット

2016年は中国経済成長率の減速、世界的な原油価格の急落、さらにアメリカ経済における金融の出口戦略においての混迷、日経平均株価の乱高下など様々な波乱含みの様相を呈しています。但しこのような経済市況はいずれ適正な成長軌道に向けていくと考えらえます。

現在の世界経済は先進国首脳会議(G7)など国際協調を保ちながら様々な問題を解決していくスキームが形成されつつあるので、過度に警戒する必要はないと思います。
一方国内経済においては、安倍首相は経済復興を主要テーマに掲げ経済成長率2%を目標としています。この目標を達成するためにアベノミクス「3本の矢」の一つである「大胆な金融政策」が実施されています。

景気は2014年4月の消費税増税(8%)から回復スピードが鈍くなり、2015年10月から予定されていた消費増税(10%)は2017年4月に延期となりました。中国経済の減速や原油価格の下落も大きな要因となっています。

2016年7月には参議院選挙も控えており、このまま景気足踏みが続けは消費税増税に対して何等かの変更・延期の可能性もないとは言えます。ただし安倍首相は2017年4月の消費増税に対しては「景気判断条項を付すことなく確実に実施する」としていますが、実際には予定通り消費税10%を実施するには、やはり景気回復が前提条件となるのではないでしょう。

point3 金融緩和とローン金利

消費税増税による景気減速などの影響があれば、安倍内閣の経済成長目標2%を達成するために一層の金融緩和政策が実施される可能性もあります。このように消費税増税は低金利の要因となり、マンション投資におけるローン金利にも影響を与えます。

日本銀行は「2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで「量的・質的金融緩和」を継続します」としています。 このような低金利政策により住宅ローン金利が低下しているので、マンションなど住宅売れ行きの後押しとなっています。

住宅地では低金利や住宅税制の下支えによる住宅需要の増加が地価の上昇に寄与しています。商業地においても「金融緩和による資金調達環境が良好なこと等を反映し、不動産投資意欲は旺盛で、商業地の地価は総じて堅調に推移しており、上昇ないし下落幅の縮小が見られる(国土交通省)」とされており、低金利が地価上昇の一因ともなっています。

2016年1月29日には日銀の「マイナス金利」が発表されました。これは、通常市中銀行は日銀の当座預金に一定の付利のもと預金しますが、従来は0.1%の金利でしたが、今回はマイナス金利ということでマイナス0.1%となります。市中銀行は日銀に預ければ預けるほど、預金が減少しますので、企業や個人に積極的にお金を貸し出す姿勢が顕著になるでしょう。

マイナス金利にも敏感に反応するのはやはり不動産業界ではないでしょうか。潤沢な資金が不動産業界にも流入しますので土地取引、マンションの売れ行きなどの一層のポジティブ要因となると思われます。

point4 地価、建築費、マンション価格の行方

企業業績の回復とともに、都心部を中心に地価は上昇しています。2015年の基準地価では都心部を中心に地価が上昇、エリア別の変動率は中央区の住宅地は平均で前年比8.8%の上昇となり港区の商業地は同7.8%の上昇がそれぞれ最高となっています。

2016年は地価においては再開発の促進により、特に商業地域の一段の地価の上昇が予想されます。それはCRE(企業の不動産投資)がさらに加速し、特に都心のSクラス、Aクラスのビルの需要増も地価の上昇要因となります。

建築費の推移を見ますと、建築費指数(2005年=100)は2010年の98.9から上昇を始め、2015年には約117まで上昇していましたが、2015年には上昇も一服し年末にかけ若干低下するなど落ち着いた動きを見せています。この要因として原油価格下落に伴う資材価格の下落や、人手不足が一時的に解消されてきたことなども考えられます。

しかし国土交通省は公共工事の際の人件費を2月から4.9%引き上げることを発表しており、先高感を持っていることが分かります。また2016年1月には原油価格高騰の原因となっていた、ロシアやアラブの生産削減の可能性を伝える報道も出ています。

今後原油価格の上昇や東京五輪開催に伴う建築需要が増加してくれば、建築費は再び増加することも予想されます。
原油安という恩恵がある反面、円安や五輪特需により建築需要が増加し、人手不足も常態化しつつあります。直近では生コンなどの建築資材も需要が増加し、価格も上昇の可能性もあります。

地価・建築費の上昇からマンション価格は現在上昇傾向にあり、好立地のワンルームマンションの価格も上昇しています。不動産経済研究所が発表した2015年の首都圏マンション市場動向によると、2015年のマンション価格は1991年以来の高価格となり、高価格物件の割合が多くなっているという事です。

こういった高価格化・高額物件割合の増加傾向は、ワンルームマンションにも押し寄せ、2016年以降も強まると予想されます。

2015年基準地価 都心部の地価動向

市区名住宅地商業地
平成26年
変動率
平成27年
変動率
平成26年
変動率
平成27年
変動率
東京都区部1.92.13.24.0
千代田区5.55.85.35.9
中央区7.58.86.47.7
港区5.44.54.97.8

<国土交通省「平成27年都道府県地価調査」>

建築費指数の推移(マンションRC)
2005年=100

指数種類建築原価
2010年平均98.9
2011年平均100.1
2012年平均103.0
2013年平均106.5
2014年平均114.2
2015年1月117.4
2月117.2
3月117.2
4月117.3
5月117.4
6月117.5
7月117.4
8月117.1
9月117.3
10月117.0
11月P116.8
12月P115.7

<一般財団法人 建設物価調査会「建築費指数」>

point5 訪日客の増加と経済効果

訪日客の増加は日本経済に大きなプラスの影響を与えています。2015年の訪日外客数は過去最高の約1,973万7,000人で、前年比47.1%増と伸び率も過去最高となりました。訪日客の消費額は前年比71%増加の3兆4771億円となりました。このように多額の消費は経済効果も非常に大きくなっています。

外国人訪日客の多く訪れる銀座では大型再開発の影響もあり、地価上昇率が高くなっています。特に訪日中国人の半分は銀座に買い物に来ると言われており収益上昇からの店舗需要なども高くなっています。

赤坂プリンスホテルの跡地に建設される新ホテル「ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町」が2016年7月にオープンしますが、訪日外国人富裕層などをターゲットに外国人比率70%を見込んでおり、1部屋最高59万円なる予定です。

今後政府は訪日外国人3000万人を目標としており、経済効果もさらに大きくなると考えられます。 多くの訪日客を迎え、ホテルなど宿泊施設の不足も指摘されています。ホテルなどの建築需要や「爆買い」の商業施設などによる不動産需要なども高まると思われます。

訪日外客数

2014年2015年伸び率
訪日外国人数13,41万3,467人19,73万7,400人47.1%
消費額2兆278億円3兆4771億円71%

<日本政府観光局(JNTO)「平成27年 訪日外客数・出国日本人数」>

訪日外国人の影響もあり「銀座」の地価上昇率が高い

東京圏・商業地
順位基準値の所在地変動率(%)
2中央区銀座六丁目4番13外『銀座6-8-3』19.6
4中央区銀座二丁目2番19外『銀座2-6-7』16.8
9中央区銀座三丁目101番14外『銀座3-2-9』12.2

順位は東京圏商業地の地価上昇率順位
<国土交通省「平成27年都道府県地価調査」>

point6 東京オリンピックとの関係は

2020年の東京オリンピックに向けて再開発が進んでいます。日銀が2015年12月に発表した「2020年東京オリンピックの経済効果」によると東京オリンピック開催により「日本の2015~18年の実質国内総生産(GDP)成長率を毎年0.2~0.3ポイント程度押し上げる」と試算されています。またピークと見込まれる2018年の経済効果は単年で5兆~6兆円となり、2014年と比べてGDPを約1%押し上げると予想されています。また訪日客は2020年には3,300万人に達すると試算されています。

建築費等の投資額は様々なプロジェクトにより2020年まで約10兆円とされており、また規制緩和等によりさらなる成長が見込めると見られています。

今後数年でオリンピックによる経済の活性化が本格化しそうです。過去の東京オリンピックの例から考えると、歴史的な転換点ともなる可能性があります。

報じられている主なオリンピック関連建設プロジェクト

案件名案件名事業規模着工開始
(予定含む)
完成
目途
詳細・進捗等
会場
設備
オリンピックスタジアム上限1550億円未定2020年計画検討中
競技施設・選手村約0.3兆円2016年頃2019年計画検討中
宿泊民間ホテル約0.8兆円2015年2020年老舗ホテル改修
都心新規開業








交通首都圏3環状線約2兆円2000年2020年神崎IC~大栄JCT開通
(15/6月)
羽田成田直結線等未定2020年頃計画検討中
再開発豊洲・築地約4兆円2014年2016年築地市場の豊洲への移転
日本橋・銀座2014年2018年デパート建て替え等
品川・田町2016年頃2020年品川~田町間に山手線
新駅開業
新宿・渋谷・池袋2014年2020年頃新宿西口・渋谷駅・
池袋西口再開発
臨海部カジノ約0.8兆円未定計画検討中

(資料)報道情報、日経BP[2015]、三菱UFJモルガンスタンレー証券[2013]、みずほ総研[2014]、各社リリースなど
<2015年12月 日本銀行調査統計局「2020 年東京オリンピックの経済効果」>

東京オリンピック開催の経済効果(イメージ)

<日本銀行調査統計局「2020 年東京オリンピックの経済効果」>

point7 将来を見据えた不動産投資法

このように景気回復基調にある日本経済ですが、オリンピックを契機に大きな景気の向上が期待されます。オリンピックの開催によるGDP押上げ効果は催終了後にもあり、GDP水準は下落せず経済を持続的に押し上げる効果があるとされています。

過去のオリンピックによると、建設投資は開催の約2~3年前に大幅に増加する傾向にあり、日本では2017~2018 年頃に建設投資が大きく増加する可能性が高いと見られています。

2017年には消費税10%となり物価が上昇する可能性があります。景気減速の可能性がありますが、オリンピックによる景気押し上げ効果により相殺されることも考えられます。

何よりもオリンピックを契機に大規模な再開発や交通インフラの整備が行われて、東京全体のポテンシャルは大きく向上します。2016年は日本経済や東京が歴史的に大きく変貌する直前にあると言えます。今不動産資産を購入すれば、東京のポテンシャル上昇とともに資産価値も上昇するのではないでしょうか。

今日本人の預金が2015年11月時点で977兆円と過去最高となりました。これは高齢化による生活の不安のために預金をしている方が多いことも要因です。

将来のためにも、2016年は世界的に見ても有望スポットである「東京」エリアにマンション投資を開始する絶好の機会と言える年となるでしょう。



野中清志

住宅コンサルタント
株式会社オフィス野中 代表取締役
宅地建物取引主任者

<住宅コンサルタント>
マンションデベロッパーを経て、2003年に株式会社オフィス野中を設立。マンションを始めとする不動産に関する講演・執筆等多数。

主な著書・連載・コメント掲載等
「週刊朝日」 「AERA」朝日新聞社/「売れる」「貸せる」マンション購入法」「ワンルームマンション投資法<改訂版>」 /週刊住宅新聞社
朝日新聞・広告コラム「住まいの未来」/日経BP セーフティジャパン(Web)2012年より<連載中>他多数