2012年12月に発足した安倍政権のもと、様々なデフレ対策が功を奏して景気が上向いてきました。それと同時に、消費税率が2014年4月に5%から8%に引き上げられました。

投資用マンションは土地部分には消費税がかかりませんが、建物部分には消費税がかかります。立地によって異なりますが大体マンション価格の60%位が建物で40%位が土地価格であることが多いです。一般の商品に比べて消費税が上がる割合は低くなっていますが、絶対額は大きいので影響度は高いと考えられます。

では物価上昇の傾向も続いていますが、マンション市場にはどのような影響が出ているのでしょうか。まずは景気の動きから見てみましょう。

物価は上昇傾向で推移

消費税が8%となった2014年4月には全国の消費者物価は前年同月比3.4%の上昇となり、消費税増税分を越える物価の上昇となりました。その後も5~7月は3%を超える上昇率が続き、物価が上昇傾向にあることがわかります。

物価上昇は消費税上昇分を上回っており、景気も着実に上向いているようです。

年平均(前年比 %)
2011年2012年2013年
総合▲0.30.00.4
月次(前年同月比 %)
2014年4月5月6月7月
3.43.73.63.4

(出典:総務省『平成22年基準 消費者物価指数 全国 平成26年(2014年)7月分』〈2014年8月29日公表〉)

2014年地価は反転。ターニングポイントに

次に地価の動きをみてみましょう。

地価の代表的な指針である「公示地価」を見てみると、2014年の三大都市圏の地価は、2013年の下落から一転、住宅地、商業地ともに上昇に転じました。東京圏では住宅地で前年の0.7下落から0.7%上昇に、商業地では0.5%下落から1.6%上昇と、それぞれ上昇に転じています。2014年は地価の転換期の年となったようです。

平成26年地価公示の概要

住宅地商業地
(単位:%)22公示23公示24公示25公示26公示22公示23公示24公示25公示26公示
全国▲4.2▲2.7▲2.3▲1.6▲0.6▲6.1▲3.8▲3.1▲2.1▲0.5
三大都市圏▲4.5▲1.8▲1.3▲0.60.5▲7.1▲2.5▲1.6▲0.51.6
東京圏▲4.9▲1.7▲1.6▲0.70.7▲7.3▲2.5▲1.9▲0.51.7
大阪圏▲4.8▲2.4▲1.3▲0.9▲0.1▲7.4▲3.6▲1.7▲0.51.4
名古屋圏▲2.5▲0.6▲0.40.01.1▲6.1▲1.2▲0.8▲0.31.8
地方圏▲3.8▲3.6▲3.3▲2.5▲1.5▲5.3▲4.8▲4.3▲3.3▲2.1

(出典:国土交通省『平成26年地価公示』)

その後は、主要都市の高度利用地の地価動向を調べた『地価LOOKレポート』によると、2014年4月1日から7月1日までの全国150地区の地価動向は上昇が120地区(前回119)、横ばいが28地区(前回27)、下落が2地区(前回4)となり、上昇地区が全体の8割となりました。都心部や人気の住宅地などはその8割が地価上昇となっているようです。前期(1~4月)とくらべて地価の上昇は緩やかな変化となっています。

東京都心部の商業地である銀座や新宿三丁目の地価が3~6%の上昇となるなど、高い上昇率を示しています。

『平成22年基準 消費者物価指数 全国』

主要都市の高度利用地の地価動向
2014年2014年
1月1日~4月1日4月1日~7月1日
上昇119120
横ばい2728
下落42

(出典:国土交通省『平成26年第2四半期(平成26年4月1日~平成26年7月1日)主要都市の高度利用地地価動向報告~地価LOOKレポート~』)

建築費・マンション価格は上昇したか?

このように物価・地価が上昇する中、建築費も上昇を続けています。2005年を100とする指数で工事費を見てみると、RC(鉄筋コンクリート)の場合、2012年には101.7であった指数が2013年には105.0に上昇、さらに2014年の1~6月平均では111.4と2012年と比べ、10ポイント近く上昇しています。

では、マンション価格はどうなっているでしょうか。不動産経済研究所の調べによると首都圏で発売された投資用マンションのうち、2500万円以下の物件の割合が2012年の75.7%から2013年には59.8%へと減少、価格が高額にシフトしていることが分かります。今後地価、建築費上昇によりマンション価格の上昇が続けば売れ行きにも影響がでるかもしれないと同研究所は見ているようです。

首都圏で発売された投資用マンションの平均価格は2013年には2583万円でしたが2014年(1~6月)には2623万円に上昇しています。平方メートル単価も2013年の98.4万円から2014年(1~6月)には103.7万円と約5%の上昇となっています。

着実に上昇を続ける物価とともにマンション価格も上昇傾向にあるようです。

2500万円以下の投資用マンションの割合

戸数シェア
2012年5,274戸75.7%
2013年3,413戸59.8%

(出典:不動産経済研究所『投資用マンション市場動向』)

建築費の上昇率と投資用マンション単価の推移

2012年2013年2014年
1~6月
工事費指数※101.7105.0111.4
投資用マンション
平均価格
2382万円2583万円2623万円
投資用マンション
平方メートル単価
96.8万円98.4万円103.7万円
投資用マンション
平方メートル単価上昇率
0.8%下落1.7%上昇5.0%上昇

※工事原価、RC、2005年を100とする指数(一般財団法人「建設物価調査会」調べ)。
(出典:不動産経済研究所『投資用マンション市場動向』)

2014年の工事費の推移

工事原価
1月109.8
2月110.1
3月111.8
4月111.9
5月112.0
6月P 112.8
平均111.4

※注:Pは暫定値。
(出典:一般財団法人「建設物価調査会」調べ)

発売エリアは? 都心部マンションは今が買い?

首都圏投資用マンションの発売エリアは2013年には東京都大田区がエリア別で3年連続第1位となり、発売戸数は955戸。2014年1~6月では前年2位の江東区が1位となり、大田区・江東区がともに500戸台の発売戸数となっています。

地区別供給戸数ランキング(2014年1~6月)

順位エリア発売戸数
1東京都江東区535戸
2東京都大田区532戸
3東京都品川区367戸
4東京都豊島区353戸
5東京都港区310戸

(出典:不動産経済研究所『投資用マンション市場動向』)

地区別供給戸数ランキング(2013年1~12月)

順位エリア発売戸数
1東京都大田区955戸
2東京都江東区631戸
3東京都墨田区538戸
4東京都新宿区491戸
5東京都品川区349戸

(出典:不動産経済研究所『投資用マンション市場動向』)

2013年には3位であった墨田区は2014年には6位となりました。東京スカイツリーで人気となった墨田区ですが、東京オリンピックや山手線新駅誕生、リニア中央新幹線など、その後のトピックに押されてかやや供給が減少のようです。

江東区は東京オリンピックの選手村を始め、様々な発展が期待できるエリアです。大田区は東京・横浜の中間に位置する大変利便性の高いエリアであり、マンションの資産価値も期待できます。

2014年の供給エリアを見ると品川区、豊島区、港区など、今後発展も期待できる利便性の高いエリアに多くのマンションが供給されていることが特徴です。今後地価・マンション価格が上昇していくと、価格上昇を避けるためにこれらの一等地からやや外れ、若干都心から遠くなることも考えられます。

2014年に地価が上昇に転じましたが、逆に言えば、2013年までは地価は下落を続けていたことになります。マンションの用地仕入れは発売より1年近く前になることも多いので、今年後半位に発売されるマンションが、地価が底値であった最終時期のものです。まさに「プレミアム」な価値を持っているとも言え、今後のマンション価格上昇前の買い得物件ではないでしょうか。

金利の動きに注目

このように景気は回復軌道に乗ってきました。景気上昇期には物価が上昇しますが、同時に金利も上昇する傾向にあります。

しかし現在はまだ景気の回復期に入り始めた状態ですが、さらに本格軌道に乗せるために、金利はまだ低く抑えられています。また2014年9月現在では長期金利も低下を続けています。

2015年10月に消費税を10%に上げるためには物価の回復、GDP指標の上昇などが条件となっています。景気が回復を後押しするために、さらにしばらくは低金利が続くものと思われます。

金利が低いということは、企業も資金を調達しやすく、土地の需要もますます高くなる可能性があります。個人の投資家が不動産投資を行う際にも、借入金利が大きく影響します。

資金借入が変動金利であっても、現在の低金利を早めに利用した方が、恩恵を享受できる期間が長くなるわけです。

今がマンション投資の好機?

昨年2013年の首都圏投資用マンション年間供給戸数は5703戸、2012年と比べ18.1%の減少となっていました。しかし2014年(1~6月)のの発売戸数は83物件、3755戸と物件数で13.7%、戸数で12.8%の増加となっています。価格は約5%上昇しましたが、発売数は10%以上増えているわけです。年間では6500戸が供給されると予想されています。

投資用マンション発売戸数

発売棟数発売戸数
2014年1~6月83物件3755戸
2013年1~12月120物件5703戸
2012年1~12月143物件6966戸

(出典:不動産経済研究所『投資用マンション市場動向』)

投資用マンション市場の売れ行きは消費税の影響は少なく、逆に今が買い時と思う方が増えているからではないでしょうか。価格上昇や次の消費税増税の前に、駆け込みの需要も予想されます。

退職金などまとまったお金で現金購入する場合でも、地価が底を打ったばかりの今の時期がまさに好機とも言えるでしょう。

このように、消費税が上がるから急いで買わないといけない、ということはありません。消費税増税という点だけに惑わされずに、景気や市場をよく見極めた上で、自分なりの買い時を探ることが重要です。

今後の投資マンション市場の行く末は?

建設現場においては人手不足と言われて久しいですが、建設業界も様々な取組を始めようとしています。例えば大手ゼネコンの大林組が建設大手初の女性現場所長を登用しました。また大手ゼネコンの中には建設用ロボットを開発している会社もあります。

このように日本は過去の歴史を見ても、業界は窮地に追い込まれた時ほど常に新しい考え方・テクノロジーを生み出してきました。まさしく「ピンチはチャンス」ということですので。建築方面でも変わっていく可能性があります。

地価に関しては、筆者がワンルーム業界の用地取得担当者にヒアリングした所、来期(2015年4月期~2016年3月期)までの用地地入れはほぼ完了している会社が多いようですが、それ以降の土地取得が難航しているようです。その背景には投資用マンションのマンション用地となる都内の駅近の商業地域の土地はワンルーム業者だけでなく、大手ファミリーデベロッパーが30~50平方メートルのコンパクトマンション建設のための土地取得に動きだしているということ、さらに航空会社などの企業も潤沢な内部留保を基に社宅用地として土地を取得するケースもあるからです。

さらに住友倉庫などの会社も都内の中古マンションを取得するなど、にわかに商業用地の土地の取得合戦に拍車がかかっています。

このように都内の投資用マンション用地は需要と供給の関係からすると、もう一段の上昇も、もちろんエリアによってですが、見込まれます。

景気の回復から住宅需要の増加も予想され、投資用マンションの需要も増えると思われます。今後、物価や地価の上昇が投資マンション価格に与える影響はますます大きくなっていくのではないでしょうか。


野中清志

住宅コンサルタント
株式会社オフィス野中 代表取締役
宅地建物取引主任者

住宅コンサルタント。マンションデベロッパーを経て、2003年に株式会社オフィス野中を設立。マンションをはじめとする不動産に関する講演・執筆など、多数。

主な著書、連載、コメント掲載など

『週刊朝日』『AERA』(朝日新聞社)、『「売れる」「貸せる」マンション購入法』『ワンルームマンション投資法(改訂版)』 (週刊住宅新聞社)、朝日新聞・広告コラム「住まいの未来」、日経BP SAFETY JAPAN(Web)2012年より連載中 他多数