日本経済は、どう変わる?

2012年12月に誕生した第二次安倍内閣発足以来、様々な経済政策がアベノミクスとして功を奏してきました。2012年12月には9000円台であった日経平均株価は2013年12月には16000円近くまで回復しています。内閣府が発表した平成25年7~9月期の国内総生産(GDP、季節調整済)は実質で0.3%となり、4半期連続の増加となっています。

2014年4月には消費税が引き上げられますが、その反動で景気が落ち込むことを防ぐために経済対策が発表されています。経済規模は5兆円とされ、1兆円規模の現在と合わせて実施される予定です。

経済対策と減税

国費事業規模
Ⅰ.競争力強化策1.4兆円程度13.1兆円程度
Ⅱ.女性・若者・高齢者・障害者向け施策0.3兆円程度0.4兆円程度
Ⅲ.復興、防災・安全対策の加速3.1兆円程度4.5兆円程度
1.東日本大震災の被災地の復旧・復興1.9兆円程度2.4兆円程度
2.国土強靭化、防災・減災、安全・安心な社会の実現等1.2兆円程度2.1兆円程度
Ⅳ.低所得者・子育て世帯への影響緩和、
駆け込み需要及び反動減の緩和
5.5兆円程度(注)18.6兆円程度

(出典:内閣府『好循環実現のための経済対策(2013年12月5日閣議決定)』の概要)

2020年には東京でオリンピック・パラリンピックが開催されることが決定しました。 東京都の試算によると、開催に伴う経済波及効果は約3兆円、雇用誘発数は約15万人にのぼると言われています。 オリンピックに合わせて多くの施設や社会インフラが整備されますので、今後建築需要はますます増加することと考えられます。

政府の2014年度の経済見通しは、経済成長率は実質1.3%、名目3.3%となっています。2013年8月に発表した見通しは実質1.0%、名目3.1%でしたが、経済 対策の効果により上方修正されました。民間の調査機関は2014年の経済成長は前年比+0.8と予測しています。

企業業績の向上により、税収が増加しています。これに消費税増税分を加え、税収は50兆円規模とリーマンショック前の水準となるとされています。これにより公共事業の規模も大きくなり、26年度は前年度比5.3%増の5兆5645億円で調整されています(2013年12月17日現在)。

2014年は経済成長やインフラ整備等が本格化する年になりそうです。

2014年はアベノミクスの成長戦略がいよいよ実行に移され、様々な経済対策を通じて更に金融緩和も継続され、予想インフレ率がさらにアップすると思われます。予想インフレ率の上昇に伴い実質金利は低下傾向となり個人並びに民間ともに投資への関心度がさらに高まると予想されます。

今後の地価動向は?

地価は確実に反転しつつあります。

2012年10月に国土交通省が発表した『主要都市の高度利用地地価動向報告~地価LOOKレポート~』によると、2013年第2四半期(2013年4月1日~7月1日)の全国の主要都市・高度利用地150地区における地価動向は、上昇が99地区(前回80)、横ばいが41地区(前回51)、下落が10 地区(前回19)となり、上昇地区が増え、全体の約3分の2を占めました。

前年同期(2012年4月1日~7月1日)には上昇が33地区、横ばいが82地区、下落が35地区となっていますので、地価が大きく回復してきていることが分かります。

参考~『主要都市の高度利用地地価動向報告~地価LOOKレポート~』

2012年4月1日~7月1日2013年4月1日~7月1日
上昇3399
横ばい8241
下落3510

(出典:国土交通省)

上昇地区は大幅に増加

アベノミクスの金融緩和政策により莫大な資金が不動産デベロッパーやファンドに流入しました。潤沢な手元流動性は都心の商業地域のみならず首都圏の主要住宅地の地価までも押上げました。さらに消費税の駆け込み需要も不動産全体の需要喚起につながりました。

地価上昇は都心から都区部、さらに地方都市圏、特に六大都市圏である京都、福岡、名古屋、大阪、横浜等で顕著となります。この政策はデフレ脱却まで続く一つのプロセスに過ぎず、地価上昇はゆるやかに継続されると思われます。

2014年も地価上昇が予想される理由は以下が考えられます。

●日銀の継続的な金融緩和政策による不動産業界への資金の流入の継続。
●アベノミクスの成長戦略により、設備投資を積極的に行う企業に対する法人税の減税効果による土地取得の加速。
●2014年も引き続き予想される円安により、海外からの東京を中心とした不動産投資マネーの増加による土地の需要増大。
●都市再生緊急整備地域・国家戦略特区・新線再開発、公共都市再開発等により土地の資産価値の上昇。
●景気の回復から住宅購入層が拡大し、住宅用地の需要が増大。

ただし、日本全体の地価が上昇することは考えづらく、玉石混交、つまり上がるところは上がり、下がる所は下がる、という二極化が加速すると予想されます。

建築費は今後傾向に?

景気の回復とともに建築需要が増加し、人手不足に加わり円高等の影響もあり建築資材が値上がりしています。そのような様々な要因により建築費は上昇傾向にあります。

工事費指数の推移

工事原価純工事費
2010年平均99.098.9
2011年平均100.2100.1
2012年平均102.9103.0
2013年1月103.7104.0
6月105.9106.2
11月108.0108.3

※注:集合住宅(RC・東京エリア)、2005年=100
(出典:一般財団法人 建設物価調査会 総合研究所『建築費指数』)

建築現場では深刻な人手不足が問題となっています。

長く続いたデフレの影響で、建築現場では職人さんの数が非常に少なくなっています。 建築職人の数はピーク時の1997年には約455万人でしたが、2010年には331万人となり124万人も減少しています。職人不足で建物の建築が進められなかったり、工期が大幅に遅れる例も出ています。また今後の建築費にも大きな影響が出てくる可能性もあります。


住宅着工戸数

総戸数持家賃家分譲住宅
H24182.330.229.022.8
291.631.132.124.6
384.430.030.924.4
488.730.533.025.0
589.530.932.724.7
684.429.931.822.8
787.031.029.125.6
888.230.731.725.2
987.531.931.824.6
1096.832.737.625.9
1190.632.432.525.4
1288.032.130.025.0
H25186.332.829.523.9
294.431.831.226.9
390.433.534.224.4
493.936.035.523.3
5102.735.136.630.1
697.634.136.228.3
797.934.534.827.1
896.034.133.827.4
9104.436.438.530.6
10103.738.438.925.2

※注:季節調整済年率換算値(単位:万戸)
(出典:国土交通省『平成25年10月の住宅着工の動向について』)

住宅着工戸数は増加しています。

国土交通省が発表した2013年10月の着工統計によると、10月の住宅着工戸数は、季節調整済年率換算値で103.7万戸となっています。2012年は80万~90万戸台でしたが、2013年には90万戸から100万戸へと増加しています。

建築費は2013年の春以降、一貫して上昇トレンドに入っているようです。建築費上昇の要因は、

景気回復と消費増税による駆け込み需要による建設着工の大幅増加。
●建設需要の増大により職人不足が加速。特に60台前半の熟練工の退職により不足が加速した。
●安倍政権による金融緩和政策が結果として円安をもたらし、その円安が輸入建築資材の高騰を招いた。

以上のように人手不足と資材価格の上昇などにより建築費は上昇しました。それでは2014年の建築費はどうなるでしょうか。

●2014年は東京オリンピック招致決定により都心湾岸エリアを中心にさらに大量の建設需要が生まれる。
●2015年の消費税10%に向けて再度、駆け込み需要が発生する見込みで建築費を押し上げる。
●アメリカの金融緩和縮小の動きが出ればドル高円安が加速し、さらに建築資材が上昇する可能性が高い。
●長期的な視点で見ると道路、港湾施設、トンネル、橋梁、を含めた社会インフラが急速に劣化していく中、国土強靭化政策が一層推進され、長期的な建設費が上がる可能性が大きい。

以上の理由から、建築費は上昇傾向になると考えられます。

今後の投資用マンション価格の動向は?

このように地価・建築費等の上昇を受けて、投資用マンションの値上げ圧力は高まっています。

しかし景気が向上しても、住宅の「家賃」はそれほど上昇することはありません。ですから、家賃収入が変わらないのにマンション価格だけ上昇すると、相対的に利回りの低下が起こることになります。

例えば、仮に2000万円の収益物件で表面利回り5%とすると年間の収益が100万円です。これが物件の値上がりによる表面利回りの低下を1%まで容認すると、収益100万円で利回り4%ですから物件価格は2500万円まで上昇する可能性があります。

都心部や交通の便の優れた好立地の物件は、賃貸需要が高く空室率が少ないために多少利回りが低下しても物件が売れますので、価格も上昇する可能性が高くなってきます。マンションの価格上昇が発生する場合は都心から郊外へと推移していきます。

ただし投資用マンションは利回りがひとつの基準となっているため、都心の億ションや湾岸エリアの高級マンションと比べて価格の変動率は比較的低く推移すると考えられます。

投資用の新築マンションは2014年後半あたりからいわゆる「新価格マンション」が出現するのではないかと予想されています。新価格マンションとは、上昇した地価・建築費を基に建設される、従来より値段が高めのマンションのことです。

ただし、現在の投資マンション市場は収益還元法が前提となっているため、新築マンションであれば表面利回りが5%前後、ネット利回りで4%前後が一つのスタンダードとなっていますので、都心エリアを除いては、それをキープするために供給エリアの遠隔化(遠隔化といっても東京であれば23区内です)が起こる可能性があります。

そのほかにも、マンション業界では価格上昇圧力の対策として

①一棟当たりの建設工期の延長、
②構造的な部分以外の設備仕様のコストダウン
③戸当たりの面積の圧縮(コンパクト化)など

など様々なコストダウン対策が考えらえます。実際、景気が過熱してくると過去に行われることがありました。

アベノミクスで景気が回復し、賃貸需要がさらに高まれば賃料上昇が予想され、利回りを押し上げる要因になりますが、ここにたどり着くまでにはある程度時間がかかりそうです。


野中清志

住宅コンサルタント
株式会社オフィス野中 代表取締役
宅地建物取引主任者

住宅コンサルタント。マンションデベロッパーを経て、2003年に株式会社オフィス野中を設立。マンションをはじめとする不動産に関する講演・執筆など、多数。

主な著書、連載、コメント掲載など

『週刊朝日』『AERA』(朝日新聞社)、『「売れる」「貸せる」マンション購入法』『ワンルームマンション投資法(改訂版)』 (週刊住宅新聞社)、朝日新聞・広告コラム「住まいの未来」、日経BP SAFETY JAPAN(Web)2012年より連載中 他多数