2014年の考察

第1回「“一体化”できる都市、東京」
第2回「オリンピックに向けて変貌する都市、東京」
第3回「みんなが集まり、みんなが主役になれる都市、東京」

2020年、首都圏、東京でオリンピックが開催されることが決定しました。1964年の東京オリンピックでは、開催に合わせて首都高速を始めとしたインフラ整備が急進展しました。今回のオリンピックではどのように変貌するのでしょうか。

2020年東京オリンピックは都市政策を推し進める国際公約に

2020年東京オリンピックの開催が決定しました。

最近盛んに、1964年オリンピックの時のインフラ整備の様子がテレビで放送されています。東海道新幹線の開通や首都高が整備されたのは、東京オリンピックがあったからです。さらに宿泊施設としてのホテルやスポーツ競技場が建設され、東京は大きく変貌しました。

今回のオリンピックでは、もちろん新設される競技会場もありますが、多くは既存の施設を改修して活用し、コンパクトな開催をすることがコンセプトになっています。今後、どのようになるかわからない部分もありますが、東京の都市部を中心に開催されるオリンピックには、海外からも多くの観光客が集まることは確実です。彼らに成熟都市、東京で確立されたインフラや安定した社会から生まれる恩恵を示すために、1964年のオリンピック同様、様々なインフラ整備を進めていくことが国際公約となったのです。

この効果は、何かと遅れがちであった都市整備を牽引していくことになるでしょう。既に、経済波及効果は20兆円という試算も出ています。その中には、オリンピックの競技施設の建設費なども含まれていますが、その他にも臨海と都心を結ぶ環状2号線や首都高速中央環状品川線の完成というインフラの整備や、新規産業の創造による海外からの投資や新たな雇用の発生など、今後の展開に伴う経済波及効果なども見込まれています。

さらに大きいのは、オリンピックがもたらすドリーム効果です。オリンピックに触発されてスポーツを始めたり、国際交流に携わろうと英会話スクールへ通ったり、最近話題になっている4Kテレビなども普及が進むことも考えられます。景気もマインドも人々のマインドに大きく左右されるといわれていますが、このドリーム効果がより一層、東京の経済にとってプラスをもたらすことは間違いありません。

羽田空港国際化がもたらすもの

今東京は、森記念財団の都市戦略研究所が策定している「世界の都市総合力ランキング」では、ロンドン、パリ、ニューヨークに次いで第4位となっています(2014年現在)。この都市総合力ランキングの中で、東京が他の都市に比較して弱いポイントの一つが、国際交通ネットワークの整備が十分ではないことです。

特に注目されるのは、国際線の便数です。東京では成田と羽田で国際線、国内線を分け合っていましたが、両方の便数を足し合わせても、ロンドンの半分くらいしかないのです。

ようやく最近では羽田の国際化が進んで、2014年、いよいよ本格的な国際化が始まりました。オリンピック開催決定になるまでは、羽田の国際線の発着枠は年間9万回にする予定でしたが、オリンピックで外国人観光客が増えることが明らかになったので、2020年までに、13万回に増やす計画に変更しています。

羽田空港の国際化が進むことで、政府、観光庁が目標としている訪日外国人旅行者3000万人の目標も前倒しで達成できることが期待されます。その玄関口の一つとなる羽田空港の国際化は、大きな起爆剤となるでしょう。

JR東日本が進める新線・新駅開発

さらに羽田空港の国際化にともなって、JR東日本では、田町から羽田まで貨物線を転用した旅客線の新設を計画しています。その新線を東海道線と連結することで、東京駅から羽田までが、僅か18分で結ばれるそうです。

この背景にあるのは、上野と東京駅をつなぐ上野東京ラインの開通です。これによって東北地方から東京駅を通じて羽田空港まで、JR東日本の新幹線や特急を乗り継いで直接いけるようになります。オリンピック開催を一つの目標として、JR東日本は大きく衣替えをしようとしているのです。

さらに、浜松町から出ている東京モノレールを東京駅まで延伸して羽田空港へのアクセス環境を増強する計画や、羽田空港からりんかい線へとつないで新宿に23分、さらにディスニーランドまで直結させるなどといった、ビッグプロジェクトも進行しています。これは、オリンピックには間に合わないかもしれませんが、オリンピックの開催までに工事をスタートさせることで、オリンピック後の需要増を狙っているようです。

足踏み状態から一気に加速できるか

前回のコラムでも解説しましたが、2014年9月3日に第2次安倍内閣が「元気で豊かな地方の創生」を掲げたことで、政府の予算は、2015年に予定されている統一地方選挙が終了するまでは、地方への予算が先行され、東京を含んだ大都市のダイナミックな開発は、足踏み状態となる懸念があります。その間は、民間を中心とした開発が先行して進んでいくことになりますが、その後は、オリンピック開催という国際公約を果たすために、首都圏東京のインフラ整備が進んでいくことでしょう。

ただし、そのゆくえを楽観できないことももちろんあります。2020年オリンピックに向けて、東京をバージョンアップする都市政策は東京9区の国家戦略特区で先行して行われます。その実現には、さまざまな規制緩和の実行が不可欠です。それがどこまで可能か、そして思いどおりの開発ができるか、これから1~2年間、注視する必要があるでしょう。


市川宏雄(いちかわひろお)

明治大学専門職大学院長
公共政策大学院ガバナンス研究科長・教授

1947年、東京生まれ。早稲田大学理工学部建築学科、同大学院博士課程を経てカナダ政府留学生としてウォータールー大学大学院博士(Ph.D.)。一級建築士。専門は都市政策、都市地域計画、危機管理政策、次世代政策構想。現在、森記念財団都市戦略研究所理事、日本テレワーク学会会長、日本自治体危機管理学会常任理事、日本危機管理士機構理事長など。

主な著書(共著)

『東京五輪で日本はどこまで復活するか』(KADOKAWA/メディアファクトリー)、『リニアが日本を改造する本当の理由』(メディアファクトリー)、『東京の未来戦略―大変貌する世界最大の都市圏』(東洋経済新報社)、『日本の未来をつくる―地方分権のグランドデザイン』(文藝春秋)、『文化としての都市空間』(千倉書房)など多数。

記事一覧

2015年の考察

第1回「課題を克服し、国際都市として進化し続ける、東京」
第2回「オリンピックで生まれ変わる都市、東京」
第3回「“本当の勝負”を乗り越えて——真の国際都市、東京」

2014年の考察

第1回「一体化できる都市、東京」
第2回「オリンピックに向けて変貌する都市、東京」
第3回「みんなが集まり、みんなが主役になれる都市、東京」