「不動産投資で節税できる」と聞く一方で、「不動産投資で節税できるなんて嘘」という意見を耳にしたことはありませんか?
不動産投資について、インターネットや各種SNSで口コミや情報が錯綜しているため、何が本当で何が嘘なのか、何を信じればいいのかわからなくなりますよね。
結論からいうと、不動産投資で節税できることがあります。ただし、その節税効果は限定的で、人や物件によって条件があるため注意が必要です。
そこで今回は、不動産投資で「節税は嘘」といわれる理由や不動産投資での節税効果を活かすための注意点を解説します。
「自分は不動産投資で節税効果を得られるのか気になっている」人は、参考にしてみてください。
不動産投資で節税もできるが条件がある
先述したとおり、不動産投資でも節税可能なことがあります。
不動産投資における「節税」とは、個人の所得税・住民税や相続税・贈与税を軽減したり、課税される時期を繰り延べたりする効果を指します。
うまく対策できれば税金の負担を抑えるだけでなく、課税時期を調整することで税金をコントロールできるようになります。
ただし、不動産投資をするすべての人が節税効果を得られるわけではありません。不動産投資の節税対策で特に高い効果を得られるのは、もともと所得が高い人です。
それは、高所得で納税金額が高い人ほど減価償却により課税所得を圧縮し、トータルでかかる税金を軽減できるからです。
特に課税所得が900万円(目安:額面年収1,200万円超)以上ある人は、個人の所得税率が33%~と高いため、課税所得を圧縮して節税する方法に適しています。
また、不動産投資は運用物件によっても期待できる節税効果が変わります。
特に適しているのは築年数が古い中古物件です。
法定耐用年数を超えた中古物件なら、その法定耐用年数の20%に相当する年数で一気に償却でき、単年あたりの減価償却費を多くとれるため、毎年の課税所得を圧縮してトータルで支払う税金を大きく軽減できるでしょう。
ただし、耐用年数を超えた物件の場合には、新築に比べて修繕費等の負担が発生しやすい状態にありますので節税だけに注目しないようにしましょう。
このように、不動産投資の節税対策は嘘ではありませんが、人や物件によって条件があります。
そのため節税だけを目的に不動産投資を始めるのはおすすめしません。節税の仕組みと条件を理解したうえで始めることが大切です。
不動産投資で「節税は嘘」といわれる理由は4つ
限定的とはいえ、不動産投資で節税対策は可能です。
では、なぜ節税に対して「嘘だ」という否定的な意見が目立つのでしょうか。
不動産投資で節税が嘘といわれる理由は、以下の4つです。
1.税制改正により節税しづらくなった
2.仕組みを理解しないまま投資を始めている
3.節税=所得税・住民税の軽減という思い込み
4.持ち出しが発生することで節税効果を体感しにくくなる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
嘘といわれる理由①税制改正により節税しづらくなった
もっとも大きな理由は過去の税制改正によるものでしょう。
不動産投資における節税は減価償却を活かして行います。
減価償却とは、取得した不動産を実際に使用できる期間にあわせて、毎年少しずつ経費として計上することです。
減価償却を使って不動産所得をマイナスにできれば、その年の課税所得を圧縮して所得税・住民税を軽減できます。
ところが減価償却の方法は、過去の税制改正によってたびたび変更されてきました。
初期に多額の減価償却費を計上できる定率法が使えなくなり、減価償却の方法は定額法のみに限定されるようになりました。
そのため以前と比べて償却方法が限定的になり、節税対策をしにくくなったと感じている人もいるでしょう。
とはいえ減価償却自体は有効なので、節税にならない、嘘というわけではありません。
もともと給与所得が高く所得税率も高い人は、課税所得を減価償却で圧縮できれば大きな節税効果を得られます。
税制改正で節税できなくなったわけではなく、節税の向き・不向きが顕著になったといえます。
嘘といわれる理由②仕組みを理解しないまま投資を始めた
こちらもよくあるパターンです。不動産会社の営業マンから「節税対策になりますよ」と強く押され、節税というメリットだけを見て不動産投資を始めてしまうケースです。
繰り返しますが、特に高い節税効果が得られるのは課税所得が900万円以上で、所得税の税率が33%以上になるような高所得者です。
また、不動産投資のメリットは節税効果だけではありません。
仕組みを理解したうえで投資を始めなければ、期待しているような節税効果を得るのは難しいでしょう。
嘘といわれる理由③節税=所得税・住民税の軽減という思い込み
節税と聞くと、「所得税や住民税を軽減できる」と思いがちです。
しかし実際は、不動産投資には税金額を軽減できるだけではく、課税時期を繰り延べることで税金を調整する、いわばタックスマネジメントの効果もあります。
また多額の相続資産がある場合は、対策によって相続税・贈与税を軽減することも可能です。
節税で何を得られるのかを理解せず不動産投資を始めると、このような思い込みにとらわれてしまい、うまく効果を実感できません。
嘘といわれる理由④持ち出しが発生することで節税効果を体感しにくい
新築物件をフルローンで購入したり、ローン比率が高い場合は、月々の持ち出し(赤字)が発生してしまうケースがほとんどでしょう。
不動産投資では、投資による赤字分を給与所得と損益通算※することができます。
赤字経営は課税所得を圧縮できるため、節税だけを目的に考えると赤字経営の方が節税効果はあります。
ただ赤字経営では、どうしても節税効果を体感しにくいです。そのため「節税できると聞いて始めたのに、実際は毎月赤字。やっぱり節税なんて嘘だったのか」という思考になってしまうのではないでしょうか。
不動産投資には他にもさまざまなメリットがあります。節税効果という限定的なメリットだけ見るのではなく、メリット・デメリットの全体像を把握したうえで投資することが大切です。
※損益通算とは、特定の所得の赤字を他の所得の黒字と相殺する計算方法のこと。「不動産所得」「事業所得」「山林所得」「譲渡所得」に赤字が発生した場合、給与所得の黒字部分と相殺することができるため、所得税額を減らす効果がある。
不動産投資で節税に向いている人・物件
不動産投資で節税に向いている人や物件の特徴は以下のとおりです。
節税に向いている人
・課税所得900万円以上(所得税率が33%~45%)、目安は額面年収1200万円超の高額所得者で、特に給与所得が高い人
・相続財産がある人で、特に現金の相続資産を多く保有している人
不動産投資で節税効果を期待できるのは、個人の所得税・住民税と相続税・贈与税です。そのため高額所得者で所得税率が高い人は、課税所得圧縮による節税効果を得やすいでしょう。
また相続資産を多く保有しており相続税・贈与税が心配な人も、不動産を活用した節税対策が可能です。
節税に向いている物件
・短期間で大きな減価償却費を取りやすい中古物件
物件にも節税の向き・不向きがあります。
より具体的にいうと、「耐用年数が短い木造物件」か「軽量鉄骨造の中古一棟アパート・マンション」が節税に向いています。
先述したとおり、減価償却費を取りやすいということは、課税所得を圧縮して全体の税金を軽減できるからです。
ただし不動産投資のメリットは、節税だけではありません。
不動産投資の魅力は、為替相場や株式市場の影響を受けにくく激しい値動きにさらされることが少ないため、長期的に家賃収入を得やすい点にあります。
高額所得者は別として、節税効果はあくまで不動産投資に付随するメリットと考えるようにしましょう。
不動産投資で節税できる仕組み
ここでは個人・法人それぞれの節税効果について、具体的な仕組みを深掘りして解説していきます。
個人の所得税・住民税
不動産投資で個人の所得税・住民税を軽減できるのは、減価償却により課税所得を圧縮できるからとお伝えしてきました。
とはいえ、減価償却によって物件保有中の課税所得を抑えられても、物件売却時には減価償却した分、譲渡所得が大きくなります。
譲渡所得には別途所得税・住民税が課せられるため、結局売却してしまえば別の税金が発生してしまうのです。これでは節税ではなく、単純に税金を繰り延べているだけにすぎません。
しかし譲渡所得の場合、物件の保有期間が5年以上であれば税率は約20%です。
普段の給与所得にかかる所得税・住民税率が合計43%あるとすれば、物件保有時の所得税を繰り延べし、物件売却時の譲渡所得税率約20%で課税された方がお得になるというわけです。
課税所得が900万円以上ある人の所得税率は33%、約10%の住民税とあわせると税金の負担は約43%となります。
物件保有中は減価償却によって所得への課税をできる限り抑えれば、物件売却時には実際の所得税率より低い譲渡所得税率で課税することができます。
このように税率の差異を利用して合法的に節税できる人のラインが、課税所得900万円以上なのです。
個人の相続税・贈与税
不動産投資は所得税・住民税だけではなく、相続税や贈与税対策にも有効です。
相続税は土地や建物を実売価格より安く評価する仕組みがあります。
そのため預貯金など現金での相続資産が多い人は、現金の一部を土地や建物に変えれば、相続税の評価額を下げることが可能です。
すでに土地を所有している場合は、所有土地に賃貸物件を建て、相続税の評価額を下げるという手法もあります。
相続税は2015年の税制改正で大きく増税されたため、相続資産が大きい人によっては所得税・住民税以上の節税効果を期待できるでしょう。
また、贈与税には「相続時精算課税制度」という制度があります。
これは、贈与時の贈与税額を抑える代わりに、相続のときには「贈与した財産を足し戻して」相続税を計算するというもので60歳以上の父母・祖父母から20歳以上の子・孫への贈与に対して適用することができます。
相続時精算課税制度を使った贈与の場合、2500万円までは贈与税がかからず、2500万円を超えたとしても税率は20%です。
また、1000万円のマンションを贈与する場合も、相続時精算課税制度を使えば贈与税がかかりません。
贈与者が死亡したとき、この1000万円も加えて相続税を計算することになりますが、相続税の基礎控除は比較的額が大きいので、相続税がかからないこともよくあります。
ただし、相続時精算課税制度を利用すると、暦年贈与が使えなくなり、年間110万円以下の少額贈与でも申告が必要になるほか、小規模宅地等の特例が使えなくなるといったデメリットもありますので利用する前にこれらを確認しましょう。
法人税・事業税・法人住民税
法人にかかる法人税・事業税・法人住民税も節税できます。
法人の場合、節税というよりタックスマネジメントという方が適切でしょう。
減価償却の計上によってその年の課税所得を圧縮し、法人税・事業税・法人住民税を軽減できます。
ただ先述したように、物件を売却すれば譲渡所得に課税されるため、「税金を繰り延べるだけでは節税にならない」と思うかもしれません。
しかし法人の場合、実際のお金の流れと違う流れを会計上で作れるのは、事業経営において非常に有利なタックスマネジメントです。
事業計画との兼ね合いで課税時期をうまくコントロールできれば、本業の収益が悪化したときでも不動産投資の課税コントロールでカバーしやすくなります。
事業の安定化をはかりたい法人には、タックスマネジメントによる節税対策もあります。
不動産投資で節税効果を期待するときの注意点
節税効果を期待して不動産投資を始める人は、以下のポイントに注意してください。
- 節税効果は不動産投資の数あるメリットの一つにすぎない
- 減価償却費を利用した節税ができるのは償却年数の期間中のみ。期間を過ぎると経費として計上できなくなる
- 運用が順調で黒字経営になれば、節税効果が薄れる可能性がある
- 減価償却効果がなくなった物件を売却するのか、保有したまま別の物件を取得するのか。運用の出口を決めておく
大前提として、不動産投資の魅力は「働けなくなっても長期的に収入を得やすい」「外部環境からの影響を受けにくく、他の投資に比べると急激な値動きがおきにくい」点にあります。
節税効果はあくまで付属的なメリットで、上記のとおり節税できる期間には限りがありますし、黒字経営で安定すると課税所得が増え、節税効果を実感しにくくなるという矛盾が生じます。
節税効果を期待する際は物件の出口戦略も考えたうえで、計画的なタックスマネジメントを行うようにしましょう。
まとめ
不動産投資の節税効果は限定的ですが、仕組みや条件を理解したうえで利用すれば効果を発揮できます。
以下の特徴を持った人と物件であれば、節税効果も高くなるでしょう。
・課税所得が900万円(額面年収1,200万円超)以上で、毎年の所得税率が33~45%になるほどの高所得者
・中古一棟アパート・マンションなど、短期間で大きな減価償却費を取りやすい中古物件
ただし、不動産投資の本質的なメリットは、長期的にわたり収入を得られることを期待できる点にあります。
だからこそ老後の貴重な収益源として、長く運用していくことが大切です。
したがって、節税目的だけで不動産投資をすることはおすすめしません。
節税効果はあくまで付属的なメリットとして捉え、本来の目的を見失わないように資産運用してください。

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