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【マンション経営の基礎知識】メリットや5大リスク、回避方法も解説
一口にマンション経営と言っても、一棟丸ごと所有するのか、区分所有(一部屋ずつ所有)するのかによって、必要な初期費用やメリット、リスクの大きさが異なります。
例えば、賃貸需要が高い東京23区で築10年のマンションを一棟所有したい場合、物件価格は2~5億円、初期費用は3,000~7,500万円ほど必要になりますが、区分所有なら物件価格は2,000~7,000万円、初期費用は300~1,050万円程度でしょう。
本記事ではマンション経営について知りたい、あるいは自分にはどのような不動産投資が向いているか知りたい方に向けて、「マンション経営とは何か?」といった基礎知識や「一棟・区分の違い」「マンション経営にかかる費用」「失敗を回避するためのポイント」について解説しています。
マンション経営を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
マンション経営とは
マンション経営とは不動産投資のうち、マンションを所有して、入居者に貸し出し、家賃収入を得る方法のことを指します。
まずは、マンション経営の仕組みや種類など基本的な内容について解説します。
マンション経営の仕組み
マンション経営における収入には、入居者から受け取る家賃収入や礼金、更新料などがあります。
一方、マンション経営における費用には、マンション購入時の頭金や初期費用、毎月のローン返済、賃貸管理手数料、建物管理費、修繕費、固定資産税、そして売却する場合は仲介手数料などがあります。
なお各費用の内容については、後述するマンション経営で必要な費用の章でご紹介します。
マンション経営で成功しているのかどうかを知るためには、費用に対する収入の割合を表す利回りを把握することが必要です。
またマンション経営に関する利回りには、想定利回り、表面利回り、実質利回りがあるため、それぞれの特徴を理解する必要があります。
想定利回り
マンション経営における想定利回りとは、物件の購入価格に対して、マンションに空室がないときの年間家賃収入がどれくらいかを表す指標です。
想定利回りは以下の式を使って計算します。
想定利回り={(空室なしの年間家賃収入÷物件価格)}×100
表面利回り
マンション経営における表面利回りとは、物件の購入価格に対して、年間家賃収入がどれくらいかを表す指標です。投資物件の広告に表示されている金額は、この表面利回りであることが一般的です。
表面利回りは以下の式を使って計算します。
表面利回り={(年間家賃収入÷物件価格)}×100
実質利回り
実質利回りとは、物件の購入価格に対して、年間家賃収入から年間の諸経費を引いた残りの利益がどれくらいかを表す指標です。
マンション経営における経営判断をするうえでは、収入と費用が反映されている実質利回りで判断する必要があります。
実質利回りは以下の式を使って計算します。
実質利回り={(年間家賃収入-年間経費)÷物件価格)}×100
一棟所有と区分所有の違い
マンション経営には一棟所有と区分所有の2つの方法があります。
一棟所有はマンションを丸ごと一棟購入する方法で、多くの入居者から家賃を受け取れるため家賃収入の額が大きいというメリットがある反面、物件の購入費が高額になる点がデメリットです。
また一棟所有は入居者が複数いるため、退去者が出ても他の入居者の家賃収入があることから区分所有に比べると空室で家賃がゼロになるリスクが低い傾向にあります。
一方、区分所有はマンションの一室を購入する方法です。区分所有は物件購入費が比較的安く済むメリットがありますが、家賃収入の額は一棟所有ほど大きくなく、空室が発生すると家賃収入がゼロになるというデメリットがあります。
マンション経営のメリット
木造が主流のアパートに比べ、マンションは鉄筋コンクリート造が主流のため、建物自体の性能が高いというメリットがあるマンション経営。
他にはどのようなメリットがあるのでしょうか?ここからはマンション経営特有のメリットについて具体的に解説します。
投資用ローンの借り入れ可能期間が長い
マンション経営において、マンションを現金一括で購入するケースはあまりなく、多くの場合は不動産投資ローンを利用することになります。
マンションは不動産投資ローンの借り入れ可能期間を長く設定できるため、毎月の返済額を抑えやすいという特徴があります。
マンションが借り入れ可能期間を長く設定できるのは、法定耐用年数が長い鉄筋コンクリート造や、鉄骨鉄筋コンクリート造が多いためです。
法定耐用年数とは、課税のために国税庁が定めたマンションなどの固定資産を使える期間のことで、構造別に以下のように定められています。
構造 | 法定耐用年数 |
---|---|
軽量鉄骨造(骨格肉厚3mm以下) | 19年 |
木造 | 22年 |
重量鉄骨造 | 34年 |
鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造 | 47年 |
出典:「主な減価償却資産の耐用年数(建物/建物附属設備)」国税庁
一般的に金融機関の借り入れ可能期間は、法定耐用年数-経過年数(築年数)で計算されます。
つまり経過年数(築年数)や金融機関の判断にもよりますが、法定耐用年数が長い物件のほうが、借り入れ可能期間は長くなりやすいのです。
資産価値が暴落しづらい
資産価値とは、マンションをはじめとした資産が持つ財産としての評価額や、実際に売買するときの価格のことです。
なお、マンション経営における資産価値は、家賃収入の収益価値と、マンションの売買価格の両方を含んでいます。
不動産投資をする場合、戸建てやアパートなどで運用する選択肢もありますが、なかでもマンションは資産価値が暴落しづらい傾向があります。
これはマンションなどの高層の物件を建てられる土地が、用途地域という制度によって決まっており、主要都市の住宅街や駅前など利便性の高い場所に建てられているケースが多いことから資産価値が他の物件種類よりも暴落しづらいためです。
また法定耐用年数を超える物件は、ローンを利用しにくい、修繕費などの維持費がかかるといった理由から売却しにくい傾向にありますが、マンションは法定耐用年数が長いことも資産価値が暴落しづらい理由の1つといえるでしょう。
ローン返済後の不労所得(アパートに比べ高い賃料収入)
マンション経営では、所有しているマンションに入居者がいる限り賃料収入という不労所得を継続的に受け取れます。
アパート経営でも賃料収入は継続的に得られますが、先に述べた通りマンションは好立地の場所に建てられていることが多いため、アパートよりも高い賃料収入を確保できる傾向にあります。
またマンション経営において、清掃や点検などは管理会社に委託しているケースが多いことから、管理にかかる労力も比較的少なくて済むでしょう。
なお、ここではマンション経営のメリットを紹介するため、アパート経営と比較して解説していますが、アパート経営のほうが有利な点もあります。
アパートや戸建て経営との比較については下記記事をご覧ください。
マンション経営に必要な費用
マンション経営では、マンション経営開始時や運用期間中、売却時それぞれに費用や税金がかかります。
マンション経営にかかる費用の種類と概要について、3つのステージに分けてそれぞれ解説します。
始める際に必要な費用
マンション経営を始めるには、マンション取得費用(物件代金)の他にもさまざまな諸費用がかかります。
マンションの取得費用(物件代金)
貸し出すためのマンションそのものを取得するための費用です。
マンション経営では多くの場合、一括払いでマンションを取得することは難しいため、一定額の頭金を準備して、足りない分は不動産投資ローンを活用し、その後はローンを返済してくことになります。
団信費用
団信とは団体信用生命保険のことです。団信に加入すると不動産投資ローン返済期間中にローン契約者に万が一のこと(死亡または高度障害状態)があった場合に、残債がゼロになります。
一般的に団信費用はローンの金利に含まれていますが、がん団信などの特約を追加する場合には、上乗せ金利が必要になる場合もあります。
仲介手数料
仲介手数料とは、マンション売買が成立したときに、取引を仲介した不動産会社に支払う手数料で、成功報酬の意味合いがあります。
仲介手数料の上限は物件価格×3%+6万円で、新築物件購入の場合、仲介手数料はかかりません。
不動産取得税
不動産取得税とは、土地やマンションなどの建物を取得したときに一時的にかかる費用です。
令和6年3月31日までに取得した場合の税率は建物(住宅)3%、土地(宅地及び宅地評価された土地)が1.5%となっています。
印紙税
印紙税とは契約書に貼付する収入印紙の代金のことです。印紙税は、契約金額に応じて段階的に税額が上昇します。
例えば令和6年3月31日までに作成された不動産売買契約書の場合、契約金額500万円超1,000万円以下の場合は5千円(軽減前税率1万円)、1,000万円超5,000万円以下の場合は1万円(軽減前税率2万円)です。
登記費用(登録免許税を含む)
登記費用とは、所有権移転登記や抵当権設定登記にかかる費用です。
登記手続きは多くの場合、司法書士に依頼をするため、通常は司法書士の報酬とあわせて司法書士に支払います。司法書士の報酬の相場は10~20万円です。
【売買による所有権移転登記費用の計算方法】
建物:固定資産税評価額×2.0%
土地:(軽減前)固定資産税評価額×2.0%(令和5年3月31日までは1.5%)
【抵当権設定登記】
借入額×0.4%
火災保険料・地震保険料
マンション経営をおこなっていく過程では、所有している物件が火事や自然災害、地震などで損害を受ける可能性があります。
火災保険は建物が火事や自然災害で損害を受けたときの修理代を補償するもの、地震保険は地震で建物が損害を受けたときの費用を補償するものです。
ただし、地震の損害を受けたときに支払われる地震保険金に関しては、被災直後の当面の生活費を補償するという趣旨があり、十分な補償とならない可能性があるため注意が必要です。
保険料は構造や延べ面積・立地によって異なりますが、木造よりも鉄筋コンクリートの方が火災保険料、地震保険料いずれも安い傾向があります。
つまり、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造が多いマンションは、火災保険料や地震保険料が比較的安く済むということです。
金融機関への融資手数料
マンション取得にあたり、不動産投資ローンを利用するときは、金融機関に融資手数料を支払う必要があります。
金融機関によって融資手数料は異なりますが、おおよそ借入金額の1~2%が一般的です。
運用中に必要な費用(継続して発生する費用)
不動産取得後も、継続的にかかる費用があります。また不動産投資ローンを利用していれば、毎月の返済が必要です。
3,000万円でマンション経営を始めたとした場合の年間収支の一例を見てみましょう。
家賃収入 | 120万円 |
---|---|
賃貸管理手数料 | 6万円 |
建物管理費 | 9万円 |
修繕積立金 | 9万円 |
固定資産税・都市計画税
(小規模宅地の特例はないものとします) |
35.7万円 |
借入金返済
(不動産投資ローンの借入額2,500万円、金利3.0%、返済期間30年) |
約126万円 |
所得税 | 20万円 |
収支 | ▲85.7万円※ |
※借入金返済が終了すれば、借入金返済部分が0円になるため、収支は+40.3万円に改善されます
賃貸管理手数料
マンション経営を始めると、ご自身がマンションのオーナーになりますが、オーナーの業務は入居者の募集から契約の締結、部屋の管理、家賃回収、トラブル対応など多岐に渡ります。
副業でマンション経営をしている場合は、本業に支障をきたす可能性もあります。
マンション経営を始めたら、こうした管理は賃貸管理手数料を支払い、専門の管理会社に委託するのが一般的です。
管理を委託した場合の手数料は、家賃収入×5%程度が目安です。
建物管理費
区分マンションはご自身が所有する専有部分と共有部分の2つに分かれていて、共有部分については管理組合で管理をします。
共有部分の管理は管理組合に委託することになるため、建物管理費が発生します。また将来の共有部分の大規模修繕に備えて、修繕積立金も必要です。
一方、専有部分についてはオーナーが管理をすることになります。設備の故障や交換費用、リフォーム費用はオーナー負担のため、専有部分の管理費用についても備えておきましょう。
固定資産税・都市計画税
不動産を所有すると、固定資産税や都市計画税がかかります。
固定資産税の税率:固定資産税評価額×1.4%
※土地の場合、住宅一戸あたり200㎡までの部分は固定資産税評価額×1/6×1.4%(小規模宅地の特例)
都市計画税の税率:固定資産税評価額×0.3%
所得税/住民税
マンション経営における家賃収入が経費よりも多い年は、所得税が発生し、その翌年は住民税が発生します。他の所得がある場合は、それらの所得と合算して確定申告をおこない所得税を納めます。
例えば、本業の所得が300万円(給与所得控除後)、さらにマンション経営の所得が100万円だった場合、合計所得金額は400万円です。ただし、ここからマンション経営に関連する費用があれば、差し引くことができます。
仮に、年間のマンション経営の費用が50万円なら400万円から50万円を差し引いた所得は350万円となり、この金額に所得税の税率を掛けて税額を計算し、確定申告時に所得税を支払います。
住民税は確定申告時の申告内容をもとに金額が決まり、後日納付額の通知が届きます。
手放す際に必要な費用
所有しているマンションを売却するときも費用がかかります。
マンション売却時も取得時同様、仲介手数料、印紙税、所有権移転登記費用と司法書士報酬がかかり、購入時より高い金額で売却できたときは所得税や住民税の支払いも必要です。
マンションを売却したときの所得税は、マンションの所有期間に応じて税率が異なります。
所有期間 | 項目 | 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税※ | 合計 |
---|---|---|---|---|---|
5年以下 | 短期譲渡所得 | 30.0% | 9.0% | 0.63% | 39.63% |
5年超 | 長期譲渡所得 | 15.0% | 5.0% | 0.315% | 20.315% |
※平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付することになります。
相続でマンションを取得したときは、被相続人が死亡した年の1月1日から死亡した日までの所得について、確定申告をする必要があります(準確定申告といいます)。
また相続税の基礎控除額を超える場合は相続税の納付も必要です。所有権移転登記も必要ですが、相続の場合の所有権移転登記は土地・建物いずれも固定資産税評価額×0.4%に軽減されています。
マンション経営の5大リスク
ここではマンション経営における主なリスクを5つ紹介します。
空室
マンションを経営していて、入居者が転勤や病気など、何らかの理由で退去した場合、次の入居者が見つからない限り家賃を受け取れなくなります。
仮に不動産投資ローンの返済期間中に退去があると、ローンだけを返済する期間が生じるリスクがあります。
一棟所有は他の入居者の家賃収入で補えますが、区分所有の場合は家賃収入がゼロになるため特に注意が必要です。
自然災害
台風や洪水、地震などの自然災害によって所有する建物が損害を受ける場合があります。
一棟所有の場合は特に損害の規模が大きくなる可能性があるため注意が必要です。火災保険や地震保険で万が一に備えておきましょう。
区分所有の場合、一棟所有ほど大きな損害額になることは考えにくいですが、その分保険料も割安のため、一棟所有と同様、備えておくことをおすすめします。
老朽化(修繕費)
マンション経営をしている限り、所有している物件を大切に使っていても年月の経過とともに設備や外壁などが劣化していくことは避けられません。
管理組合で大規模修繕なども行われますが、専有部分の修繕費は自己負担になります。老朽化が進むと修繕費も高くなる傾向があるため、修繕費も少しずつ積み立てておきましょう。
家賃滞納
入居者全員がスムーズに家賃を支払ってくれるとは限りません。マンション経営をしている限りは滞納家賃のリスクがあることも心得ておきましょう。
価格変動・金利変動
株式やFXほどではありませんが、不動産価格も市場動向によって上下します。
そのためご自身が売却したいときに、不動産価格が下落していて想定していた金額で売却できない可能性があります。
また不動産投資ローンを利用していて、変動金利を選んでいる場合、市中金利の動向次第では返済期間中に返済額が増加する金利変動リスクにも注意が必要です。
マンション経営の失敗を回避するためにおさえておきたいポイント
マンション経営における失敗とは、赤字経営で不動産投資を終えることを指します。
せっかくリスクをとってマンション経営をしたにも関わらず、最終的に赤字で手持ちの貯蓄を取り崩してしまったということのないよう、失敗回避のためにおさえておきたいポイントを3つ紹介します。
立地
マンション経営をする過程では、入居者が転勤や結婚などによって退去することがあるため、空室リスクは避けられません。
仮に空室が発生しても空室期間を短くできるよう、賃貸需要が高いエリアにあるマンションを選ぶことが大切です。
出口戦略
不動産は実物資産のため、賃貸需要が低い区分所有マンションや売却価格が大きい一棟マンションを所有している場合、売却に時間がかかり現金化に時間がかかることがあります。
最初から売却を考慮して購入する必要はありませんが、いざ売却するときは時間がかかることも考慮して、物件選びをすることが大切です。
稼働率
マンション経営を始める段階で、満室を想定した利回りである「想定利回り」を参考にして物件を購入してしまうと、予想外に空室が発生する場合があります。
マンション経営の失敗を回避するためにも、上記の3つのポイントをふまえた上で、収支計画を作る段階で諸経費や税金まで十分にシミュレーションをしておきましょう。
また特に一棟所有を検討している場合は、あらかじめレントロール(入居者全員の賃貸借条件を一覧表にしたもの)を必ず確認しておきましょう。
まとめ
マンション経営には一棟所有や区分所有というやり方があり、必要な初期費用やメリット・リスクが異なります。両者の違いを理解して、ご自身の運用目的や予算にあった方法を選ぶことが大切です。
また、マンション経営の失敗を回避するためにも、物件選びの際はマンションの立地や、出口戦略、稼働率を意識することを心がけましょう。
※本記事の掲載内容は、掲載時点(2023年1月)の法令・情報等により基づいておりますが、その内容の正確性、信頼性等を保証するものではなく、本記事の情報に基づいて被ったいかなる損害についても、運営者及び情報提供者は一切の責任を負いません。
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監修:小泉 由貴乃(レイビー編集長)
管理業務主任者、マンション管理士、3級ファイナンシャル・プランニング技能士